スタートアップとスモールビジネスの違い。サラリーマンはどちらで起業するべきか?
フラスコ代表、安田です。最近ノートとビールのことしか書いてない気がするので、たまには違うことも。実は「起業をしたい」という人の多くが、起業というのはスタートアップのことだと思い込んで行動が止まってるんじゃないの、という話です。
「起業って危険でしょ?」
起業をすると知り合いに言ったときに、常識的と言って良いくらいほぼ確実に返ってくるのがこの反応です。起業イコールとんでもなく危険、起業なんてする人は「頭のおかしい人」だと思われてしまう。このことに私は、起業をする前からずっと違和感がありました。たかが起業するくらい、そんな特別なことかな?と。
でもそのあとに気づいたのは、おそらくは起業のことを考えたことのないほぼ全ての人が、そして起業をしようとしている人の多くが、もしかしたら起業支援をしている人の一部すら、スタートアップとスモールビジネスを混同しているのではないかと。起業をするということはすなわち、スタートアップの世界に身を投じるということだと考えているのではないかと。
実際にはそうではなくて、「起業をしてコンサルタントになります」なんていうのは明らかにスモールビジネスの話なので、そりゃ確かにサラリーマンと比べると収入が下がるリスクはあるかもしれませんが、そこまで危険じゃないんですよね。この他に「ベンチャー」という言葉もあってこれがどちらの意味で使われることもあるので、混乱に拍車をかけています。
スタートアップとは
スタートアップというのは、文字通りの意味としては「ゼロから始める」くらいのことですが、良く使われる定義としては「誰もが考えつかないアイデアで市場を開拓し、そして短期で急成長をする企業」くらいが適切でしょう。つまり世の中にまだ普及していない技術や商品、ビジネスモデルなどを使って数十億円、数百億円という売上を目指す企業(起業)のことです。
スタートアップの発想では人を雇ってプロダクトを開発・営業したり、多額の広告費を使うなどレバレッジをかけるのが普通なのでまとまった資金が必要となり、通常は資金調達の必要があります。それも、銀行がお金を貸せるほどわかりやすいビジネスではないことが多いので、エクイティ(株式)での調達が中心になります。
エクイティを入れるということは、必然的に急速に企業価値を高めて上場やM&AでのEXITを目指す、ということになります。スタートアップはリスクも高いので、年率数十パーセントという成長が見込めない限りは、投資家は株を買ってくれないからです。ハイリスク・ハイリターン、成功すれば大金持ち、失敗したらごめんなさいして解散。それがスタートアップです。
スモールビジネスとは
これに対してスモールビジネスは、文字通りには「小さなビジネス」です。個人事業主やフリーランス、一人社長のような形態は全てスモールビジネスです。人を何十人何百人と雇ったり、年に数億円の売上をあげたとしても、やっていることが既に世の中にあることの後追いであればそれはスモールビジネスです。私も最初はそうでしたが、資格を活かしてコンサルタントになる、なんていうのは典型的なスモールビジネスですね。
なので「スタートアップをやります」と言ったら「危険だよね!?」は会話として成り立っています。しかし「(スモールビジネスで)起業します」に対しては「危険だよね!?」ではなくて、「大変だろうけど、頑張ってね!」くらいが妥当です。売上による収入の変動と、会社にやってもらっていたところを自分一人の力でやるという大変さはありますが、そこまで危険ということではありません。
ちなみに「ベンチャー」は、私はスタートアップの意味で用いられるべき言葉だと思うのですが、起業全般を指したりもしくはスタートアップの対義語として使う人もいます。ややこしいですね。私は起業はスタートアップかスモールビジネスか、大きくはどちらかに分かれると考えればすっきりすると考えているので、ベンチャーという言葉は使いません。
最初はスモールビジネスで良い
それで思うのですが、サラリーマンや学生をやっていた人がいきなりスタートアップに挑戦するのって、かなり無謀だよなあと。スタートアップは確かに当たると大きいですが、成功する可能性はせんみつ(だとしたら0.3%)とも言われており、人生を賭けて挑戦するにはちょっと、確率が低すぎる気がするんですよね。これは起業をした今でも、そう思っています。
そもそも自分でビジネスをしたことがない、お金を稼いだことがない人がいきなり他人のお金を引っ張ってきて、レバレッジをかけて大勝負をするのってただの無謀なギャンブルですよね。投資家の立場から考えてみても、ピンときません。多少アイディアが良いくらいでは、よほどの天才が起業をするのではない限り投資したいとは思えない。
サラリーマンが起業をするなら、まずはスモールビジネスで良いというか、スモールビジネスから始めるべきだと思います。だとすると、「画期的なアイディアが思いつかない」なんてことで思い悩む必要はないし、そもそも普通にサラリーマンをやってて画期的なアイディアなんて思いつくはずがないよね、って思ってしまいます。
明確な境界線はないはず
とここまでずっと、思想としてはスタートアップとスモールビジネスは全然違うものだと書いてきて矛盾するようですが、両者に明確な境界線はないはずなんです。スタートアップが伸び悩んだらスモールビジネス的になりますし、スモールビジネスが何かのきっかけで加速すればスタートアップになります。根本的な違いはスピードと目指す規模だけなので。
私がやっているフラスコも、スピード感や想定する市場規模はスモールビジネスですが、考え方としてはスタートアップ的なものも含んでいます。エクイティを資金調達するつもりは今のところありませんが、たまたま有望な市場とマッチングして、チャンスと見れば急速に加速するという可能性はゼロではありません。そんなやり方も、あって良いと思うんです。
家族を抱えて起業をするなら、ハイリスク・ハイリターンでイチかバチかなんていうやり方はやるべきではありません。自己資金で時間をかけながら小さく実験をしてみて、ニーズを確認したら資金調達してレバレッジをかける、というやり方が健全じゃないかと考えていたりします。会社を辞めずにまずはスモールビジネスから始めるのが、これからの起業の王道になるんじゃないかなあと想像しているんですよね。