マーケティングとセールスの上下関係 〜セールスで頑張るのでは、遅いという話〜
フラスコ代表、安田です。これ会社に雇われてセールスのお仕事をしている人には酷な話になるんですが、どうやら本質なので聞いて下さい。セールスの時点で頑張って逆転するのって、できなくはないですが効率は悪いし、いろいろと問題があります。
セールススキルを高めれば
あなたがスモールビジネスのオーナーか企業の経営者、特にセールスパーソンであれば、セールススキルは重要です。事務などの専門職の方であっても、実は社内で「自分を売り込む」のは一種のセールスであるとも言えるでしょう。広くアピールや交渉をセールスと考えるなら、それが必要ない人は誰もいません。
確かにセールスの技術というのはあって、ちょっとしたコツを知ったり、場数を踏むことで確実に上手になります。才能も少しはあるのかもしれませんが、多くは学びと経験によって後天的に身に付けられるものです。「相手の話をちゃんと聴く」コーチングの技術などはその最たるものでしょう。
そしてそのセールススキルを高めれば、実際に商品が売れる確率は上がります。買う気がそれほどなかった人に対しても潜在的なニーズに気づかせ、「買わせる」ことも不可能ではありません。しかしこれをやってしまうと本当に欲しかった人ほど効果が出なかったり、あとあとトラブルにつながったりします。セールススキルのダークサイドとも言えますね。
マーケティングとは
みんなが大好きなドラッカーさんは、こう言っています。
マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。
正直、私がサラリーマン時代にこれを見たときは「なんかふわっとした、現場を知らない感じの理屈だな」と受け止めました。おそらく、自分自身がセールスに近い仕事をしていたからでしょう。そんなこと言っても、セールスが頑張って数字を作ってんだよって。事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてんだって。
しかし起業をして、全ての機能を自らで担うようになって見える景色は一変しました。「ああドラッカーちゃん良いこと言ってんじゃん」って(笑)。まさにこれで、興味がない人を相手に頑張ってセールスをしているようではプロセスが間違っていて、買いたい人だけが目の前に現れる状態を作る、つまりマーケティングこそが重要なんです。
戦略・戦術・戦闘レベル
マーケティング部門の人がセールスの人にこんなことを言ったら殴られると思いますが、マーケティングとセールスではプロセス全体に占めるレベルが違います。マーケティングは明らかに戦略レベルであり、セールスは戦術か、もしかしたら戦闘レベルです。上流と下流と言っても良いかもしれません。
戦略レベルでの間違いは、戦術レベルで取り戻すことは不可能です。競争力のない市場で、魅力のない商品を、頑張って売る。これほど非効率なことはありません。それでもセールスが優秀だと、ある程度の数字を気合いで叩き出してくれたりするので、戦略の誤りに気づくのが遅れるという泥沼にハマりがちです。
日本の大企業は、割とこんな感じで頑張っています。セールス部門は疲弊し、マーケティング部門は抜本的な改革をしたくてもその決断ができず、経営者は身動きが取れない。セールスだけが頑張るのは、組織としても良い状態ではありません。
個別相談の前に、ほぼ決まっている
話をスモールビジネスに移します。私がやっているような規模のビジネスでは、マーケティングもセールスも全て自分の裁量が及びます。マーケティングといっても大規模なリサーチやテレビCMではなく、ターゲットの設定や商品作りと、それを伝えていくセミナーなどの仕組みと集客、情報発信などが主なものです。
特にあなたが高額商品を扱うのであれば、セミナーの開催をお勧めしています。セミナーで先生として価値を届け、個別相談でクライアントさんの課題を明確にして、購入の判断をしてもらう。つまり個別相談はセールスの場なのですが、そこで強いセールスは必要ありません。というか、それが必要ならそれまでのプロセスが間違っています。
買いたい人とだけ会うための仕組み
あなたが届けるべき価値を持っていて、それを必要とする方が情報発信によって知り、あなたの商品に興味がある人だけがセミナーに参加し、あなたでオッケーと納得の上で個別相談に来てくれているはずだからです。あとは「どうします?」って聞くだけです。セールススキルなんて使う場面は、ほとんどありません。
もしそれで売れなかったら、セールススキルを疑うよりはそれまでのプロセスを改善することです。お付き合いでセミナーに参加し、興味もないのに個別相談に進むような仕組みになっていないか。情報発信は、本当に必要な人に届いているか。セミナーは本当に必要な情報を伝えているか。
そういうことを見直していくのが、スモールビジネスのマーケティングです。あなたの商品にそもそもの価値があり、必要としている人がいるなら、それをそっと届けるのがセールスです。セールスで頑張る必要なんて、ありませんよ。