サラリーマンは「現代の奴隷」なのか
フラスコ代表、安田です。私はサラリーマン時代、「まるで奴隷のようだ・・・」と感じながら仕事をしていました。起業をして自由になれたのは事実ですが、本当にサラリーマンは現代の奴隷なのでしょうか。
私が感じていたこと
もう5年以上前のことになりますが、私は日本生命という超大企業に勤めるサラリーマン(会社員やビジネスパーソンとはあえて言いません)でした。システム開発に資産運用と、かなりやりたい仕事をやらせて貰って、そのときに得た経験は今でもすごく役に立っています。会社や同僚には、感謝しています。ただそれは、今となってはの話です。
当時の私は、「まるで奴隷のようだ・・・」と感じながら働いていました。仕事の規模は大きく、専門性が高くて刺激はありましたが、誰かが決めた方針に従った作業で自分でないとできないということはなく、またお客さんのためにというよりは会社のため、組織のためにエネルギーを割くことが圧倒的に多い。上司にもものすごく気を使います。
こうしたことは若い頃なら誰でも感じる、ありふれた不満でしょう。経験を積めば、裁量も大きくなって不満もなくなるのかと最初は思いました。でも違いました。年次を重ねるごとに、不満は大きくなっていきました。これから地方で単身赴任をしたり出世競争を戦い抜いて課長になり、部長になっていくということに何の魅力も見いだせませんでした。
起業をして得た自由
何より、自由がありませんでした。一緒に働くひとはもちろん住む場所ひとつ自分で選べず、不本意な仕事を命じられればやらざるを得ない。家族旅行をキャンセルして土日出社、なんてことも普通でした。こういう理不尽の大部分は、良い上司に恵まれれば解消されたりするのですが、それは完全に運頼み。運が悪ければ最悪の上司が当たり、普通に死にます。
自分が正しいと思うことも、できませんでした。少しでも新しいことを始めようとすれば厚い稟議の壁に阻まれ、職責の外にあることには口を出すことすらできない。ただ上司からの注文に応じて、期限までに「質の高い」アウトプットをするだけの、知的な奴隷だと感じていたんです。その上で、評価されるかどうかは上司の気分次第です。みんな仕事はできますから。
それをあと20年30年と続けて「大過ない人生」から「悠々自適の老後」という未来に、何の価値も感じませんでした。人生は一度しかないので、やりたいことは全部やりたかった。当時は副業も認められていなかったので、自由と好奇心を手に入れるためには、起業をするしかないという結論に至ったんです。そして、その判断は正しかったと思っています。
起業すれば自由になれるわけではない
今では、起業をしてやりたいことをやりたいようにできるようになりました。どんなことでも、思いついたらすぐに形にすることが可能です。気の合わない人と仕事をする必要はありません。満員電車に乗ることもなければ、家族を犠牲にして仕事をすることもありません。「自由と好奇心あふれる生き方」がほぼ、達成できています。
ただし、「サラリーマンは奴隷なのでダメ、起業家は自由で最高」なんていう単純なことを主張するつもりはありません。起業をしたところで仕事が得られず、何かしなくては食べていけないので不本意な仕事を受けたり、アルバイトのようなことをしている「起業家」をたくさん見てきています。諦めて就職をする人もいます。
サラリーマンでも得られる自由はある
逆に、会社勤めをしていても、自由な人もまたたくさんいるでしょう。自由とは客観的に判定できるものではなく、主観的なつまり気持ちの問題なので、仮に文字通り中世の「奴隷」身分であったとしても、自由な心を持った人はたくさんいたと思います。
言われたことをやるだけではなく、自ら目標を設定するなどして仕事を楽しめていれば、サラリーマンも悪くはありません。先程述べた通り仕事は大きく、専門性もあるので。支えてくれるチームの質も高いです。更に上司にも恵まれれば最高の環境、とも言えるかもしれません。休暇を活かしてつかの間の自由を満喫することも可能です。
ただ、問題があります。上司や仕事は自分では選べず、また業績の悪化などによってどこかのタイミングで会社から必要とされなくなるなどの「運頼み」のリスクが高いのです。実は退職後は、何の保証もありません。起業であれば定年退職はなく、変化にも対応できるので柔軟です。サラリーマンの自由は、不安定であると言えるでしょう。
「選べる」ことが重要
大切なのは変化に対応できること、選択肢があることです。そのためには「稼ぐ力」が必要です。会社に依存していては、変化に対応できません。運悪く逆境に置かれても、耐えるしか選択肢がないのです。心身の健康を損ねても、ただ耐えるしかないという状況は、あまりに危険です。
結論として、サラリーマンはときとして「奴隷」に近い状態になるのかもしれません。それでも多くの人が「選ぶ」のですからそれなりに魅力もあるのでしょう。今は副業が許されているのですから、すぐに会社を辞める必要はありません。実験を繰り返すことで「稼ぐ力」を身に付け、選択肢を増やしていけば良いのです。
そして変化が必要とされるとき、どちらが有利か、どの生き方が自分に合っているかと比較検討をすれば良い。起業は、会社を辞めるずっと前に始めるべきです。そして実験の結果として、「サラリーマンが最高だ」という結論に至ったなら、それは幸せなことだと私は思うのです。