「ナンピン買い」は、急落場面では絶対にやってはいけない
フラスコ代表、安田です。『新しい起業のかたち』の宣伝をしなくてはいけないのに、コロナで相場がすごいことになっているので、ついうっかり過去の経験を交えつつ投資の話を書いてしまいます。今、ナンピン買いは絶対にやってはいけない、最悪手です。
ナンピン買いとは
為替でも石油でも同じなんですけど、わかりやすいので株で説明しますね。たとえば、1株10万円で買った株が、8万円に値下がりしたとします。1株で2万円の損ですよね。でもここで、8万円でもう1株買い増しをすると、持っているのは2株で18万円になります。
投資をしたのは18万円で、含み損は2万円ですからあら不思議!1株あたりの損失は1万円に減りました。損失率で言っても▲20%(2/10)だったものが、▲11%(2/18)くらいに回復しました。これで株価が元に戻れば、利益すら出ます。良かった、まだ負けたわけじゃない。これがナンピン買いです。でも実は保有数が増え、リスクも増しているのがおわかり頂けるでしょうか。
その株を10万円で買ったときには当然「もっと上がるはずだ」と思って買っているわけですから、8万円になったら「ますますお買い得」って感じても不思議ではありませんよね。ナンピン買いは賢い方法ではありませんが、通常の相場を前提とするのであればまあ、なくもないかなあというところです。
ちなみにナンピンってなんだろと思っていつものWikipedia先生に聞いたら、
難平(ナンピン。何品とも)とは、株式など相場の売買手法の一つ。 「難」は損のことを指し、それを「平均」することから、難平と書く。
だそうです。
今、起こっていること
コロナウィルスのパンデミックを受けて、今は明らかに暴落局面。通常の相場ではありません。相場というのは「じわじわどかん」と言われるように、上がるときはゆっくりなのですが下がるときはとても早いという性質があります。今のような暴落時には参加者が恐怖を感じて、一気に逃げ出すからですね。
株価は普段もある程度のレンジで上がったり下がったりしながら、基本的に長期的には上がりますし、中期的なトレンドとしても徐々に上がっていきます。経済が成長している、長期的には世界経済は成長していくという前提で資本主義は動いているので、という説明になるのでしょう。
それが、10年に1回くらいはその前提を疑ってしまうような「事件」が発生します。直前はリーマンショックや東日本大震災がそれに相当しますね。あれ、これ経済そのものが崩壊してしまうんじゃない?という恐怖が市場を覆い、誰もが手持ちの株を投げ売りしたくなる場面です。まさに、今起こっているのもそういうことですね。
ましてやここ数年、世界的に量的緩和をじゃぶじゃぶにやってきており、お金を印刷したことによる株価押し上げがされてきた(諸説あり、私見)中でのコロナ・ショックなので、どこまで落ちるか現時点では予想がつきません。
ライブドア・ショックの経験
私個人の経験としては、ライブドア・ショックがあります。これは2008年のリーマンショックよりも前、2006年の1月に「ライブドア事件」をきっかけにして新興株を中心に起こった大暴落のことです。そのとき私は少しだけの信用取引(つまり証券会社からお金を借りて投資すること)を含めて、財産の割には多額の株式投資を行っていました。
当時の私は財務部門にいて、自分なりに有価証券報告書を読み込んで分析し、「潰れることはない」と判断した新興株をいくつか買っていました。当時の私の名誉のためにいえば、それらの銘柄の一つとしてライブドアショックで潰れることはなく、長期的にはむしろ大きく成長しました。持ち続けていれば大きな利益が出たことでしょう。
しかし、若かった私はライブドアショックで含み損を抱えたことに動揺し、まだ余力のあった信用取引を使って「ナンピン買い」をして損を取り返そうとしたのです。
結果は惨憺たるものでした。もうこれ以上下がることはないと思われた株価は日を追うごとに下がり続け、全財産が吹っ飛ぶのはもちろん、お金を借りて投資をしているわけなので全て売っても借金が残るような状態になり、もっと下がったら自己破産すら見えてくるのかと震えました。
仕事は手につかず、妻や田舎の両親には絶対に言えず、かといって売って損失を確定することもできない。長期的には回復するのはわかっていましたが、もう少し下がったら「追加証拠金」俗に言う「追証(おいしょう)」が来て強制的にゲームオーバーになります。顔面蒼白で震えながら過ごす日でした。
落ちるナイフを掴んではいけないが
少しは伝わったでしょうか。暴落相場においてナンピン買いは絶対にしてはいけません。投資をしたときと前提条件が変わってしまっている、つまり運が悪かったにしても判断が誤っていたわけですから、負けを認めましょう。ナンピン買いは負けを認めないことで傷口を深めてしまう可能性の高い、愚かな行為です。
こういうのを投資格言で「落ちるナイフを掴むな」と言います。確かに日経平均24,000円の世界に慣れた人には、今の17,000円台の株価は安く見えるでしょう。しかし少し前には、日経平均が8,000円を割っていたときもあったのです。値ごろ感だけで投資をすると、ろくなことはありません。
これが私からの、若い投資家のみなさんへの忠告です。でもこういう忠告の難しいところは、これでコロナ対策がうまくいき、株価が急回復するなんてこともこれまた普通にあるのです。そのとき、「あんたが余計なことを言ったから」と私を責めないでください。投資はどこまでいっても、自己責任でお願いします。