ブルーオーシャンはどこにある?
フラスコ代表、安田です。起業をする際に、「ブルーオーシャンで戦いたい」と思うのはお気持ちもわかりますし、いまや常識的な考え方なのかもしれません。でもそんなブルーオーシャンなんて、机上で考えているだけで見つかるものでしょうか。
ブルーオーシャン戦略とは
起業に興味のある方であれば、ブルーオーシャン戦略という名前自体は聞いたことがあるのではないでしょうか。Wikipediaによれば、
競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」とし、競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」を切り開くべき
なのですが、この続きの方が重要でしょうから続けて引用しておきます。
そのためには、自分の業界における一般的な機能のうち、何かを「減らす」「取り除く」、その上で特定の機能を「増やす」、あるいは新たに「付け加える」ことにより、それまでなかった企業と顧客の両方に対する価値を向上させる「バリューイノベーション」が必要だと主張している。
とのこと。そのものずばりの『ブルー・オーシャン戦略』という本もあるので、ご興味あれば読んでみてください。
ニッチを突くのが良いのか
起業のご相談をお受けしていると、どうやらこれを表面的に解釈したのか、「ああ、競争相手がいないビジネスをすれば良いんだな」と理解してしまっている人が多いようです。それが「誰もやったことがないビジネスをしよう」というように発想が飛躍してしまっているケースも多くあります。
これが過剰になり、「新しいアイディアを思いついたのですが、検索したら既にやっている人がいたので止めました」なんてことになっています。実際に動き始める前に検索して調べてみることは有益ですが、それは市場規模や競合の状況を把握するためであって、その市場が独占状態かどうかを見るためではありません。
ブルーオーシャンは「死の海」かもしれない
仮にあなたが何か新しいアイディアを思いついたとして、検索した結果そのアイディアに関して何の情報もヒットしないのであれば、それが世の中に受け入れられる可能性はとても低いと予想されます。
今の時代、よほど技術的に優れているなどの特殊な場合を除き、アイディアそのものにはそこまで大きな価値はありません。あなたが思いついた斬新のアイディアは、少なくとも数千人が思いつき、数百人が試してみたと考えておく方が無難です。その結果、今誰もやっていないのはなぜでしょう。
単に早すぎるのかもしれませんし、何かの前提が間違えているのかもしれません。しかしもっとも恐ろしいのは、そのアイディアに対して全く需要がなくて、そもそもビジネスとして成立しないのかもしれません。その可能性を、第一に疑ってみるべきです。ブルーオーシャンとは、全く生命が存在しない「死の海」かもしれないのです。
レッドオーシャンには「何か」はいる
これに対して、誰もが思いつくアイディアに基づくビジネスは明らかなレッドオーシャンです。コーチ・コンサル・士業、飲食店、代行業、アフィリエイトや「起業支援」という仕事もここに該当するでしょう。これらは参入障壁が低いので誰でもできますから、すぐに過当競争になります。
ただ、それだけに全くニーズがないということはなく、少なくとも何人かはその職業で生活をしています。中には大きく稼いでいる人もいることでしょう。パイの取り合いではありますが、私からするとレッドオーシャンとは海で例えれば血というよりはプランクトンなのかなあという感覚です。
例えば今どき、士業の資格を取って起業するなんて進んでレッドオーシャンに飛び込む行為に見えますが、しかし士業の仕事に対して一定のニーズがあることは事実なのです。レッドオーシャンは「やってみたけど、誰も求めていなくていつまでも売上がゼロ」というリスクは低い業界だとも言えるでしょう。
ブルーオーシャンの見つけ方
ここで本来のブルーオーシャンの話に戻りますが、Wikipediaでも記述のある通り、そもそもブルーオーシャン戦略とは「誰もやっていないことをやれ」なんていう考え方ではないのです。工夫して「バリューイノベーション」を起こせと言っているんですね。
要は、なんとか士という業界自体がレッドだとかブルーだとかいう議論ではなくて、その中でどのようなポジションを取るか。行政に提出する書類に特化すればレッドオーシャンでしょうけれども、コンサルタントとしてうまくポジショニングできればブルーオーシャンになるでしょう。
つまり、ブルーオーシャンというのは上空のヘリコプターから眺めているだけで発見できるようなものではなく、どぼんと海に飛び込んで、もがき苦しみながら少し深い部分で見つけることのできる差別化要素だということです。実はこの話は『新しい起業のかたち』にも書いたのですが、机上の空論だけではなくまずは動き始めてみましょう、ということですね。