大事なのは”変わってくこと””変わらずにいること”
フラスコ代表、安田です。タイトルは槇原敬之さんの『遠く遠く』という曲からの抜粋です。北海道出身の私には、この曲はかなりツボで歌いながら泣きそうになるのですが、若い人は知らないのでしょうね。先日参加した交流会では、高橋名人のことを誰も知らないということで衝撃を受けました。今回はこの歌詞に関する、ビジネスで大切なポイントの話です。
起業家によくある行動
若い起業家には、次々と新しいことに手を出す人が多いです。大きなイベントを複数同時に手がけたり、誰とでもとりあえず手当たり次第コラボしてみたり、月替わりくらいで新しいコンテンツを開発してみたり。良く言えば多動力なのでしょうけれど、あまりに回転が早すぎて「仮説を立てて行動しているのかな」「その仮説の検証ができているのかな」とちょっと心配になります。
まあ大きなお世話でしょうから、求められない限りは何か意見することはありませんが、共通して見られるのはその起業家はいつも軽い興奮状態にあるということです。「楽しくて仕方ない」「幸せだ」「全てに感謝だ」と連呼しているのですが、SNSや表に出てこなくなる時期もあるので、反動で落ち込む時期もあるんだろうなあとも勝手に想像しています。若いとはいえ、このやり方はすごく疲れると思います。
人は「飽きる」
ビジネスを組み立てる上で常に意識しておかないといけないのは、人は飽きるということです。どんなにおいしいものも、楽しいコンテンツも有名人も、次々と飽きられます。変化できるものだけが生き残る。なので、常に新しいことを仕掛けていかないといけないというのは正しいんです。裏を返せば、同じことを続けるのは、実は怖いことなんですよね。
そういう不安が、起業家を駆り立てるんです。今回新しくやってみたコンテンツは集客に失敗した。だから次は全く違うコンテンツを違う人と組んで、会場も変えてみよう、発信するメッセージやメディアも変えてみて、どれか当たるだろう・・・。問題は、これだと仮に成功したとしてもどの要素が当たったのかがわからず、再現性がないということです。確かな仮説がないので、検証できないんです。
仮説検証のループを早く回す
手数が多いこと自体は良いことなので、起業したばかりのある時期に意識してこれをするなら良いと思います。ランダムでとにかく試行回数を増やすことで、仮説を立てるための元データを集めるという考え方ですね。うまくいく方法がぼんやり見えてきたら、そこから仮説検証のループを開始するという考えがあるなら大丈夫です。でも結構、いつまでもそのやり方を続けている人が多いように見えるんですよね。
仮説検証のループを回すには、「他を一定に保った上で」ある部分だけを変えて試すというA/Bテストが基本です。土曜と平日だとどう変わるか、肉と魚だったらどちらが人が集まるか、SNS広告とリスティング広告だとどちらが効果的か、池袋と新宿だったら・・・という。もちろん3月と4月で人の行動は変わってしまうので完全ではありませんが、それでも常に仮説検証の考え方を外してはいけません。
利益を生むのは実は「単純な繰り返し」
そうした仮説検証のループを回すことを続けていて痛感するのは、利益を生むのは実は変化している部分ではなく、単純な繰り返しの部分なのだなあということです。毎月開催すると決めたイベントを粛々と繰り返す、コンテンツを毎月提案する、ブログやメルマガを書き続けるといった非常に地味な部分こそがコンスタントに利益の90%以上を占めます。新規顧客より既存の顧客の方が実は大切だったりします。
でも、人は飽きるんですね。これはユーザーだけの話ではなくて、ビジネスをしている本人も飽きてしまうんです。最初は価値が高いと確信して提供していたコンテンツも、何回も繰り返していると自分にとっては「当たり前の話」みたいに感じてきて興奮しなくなり、新しいコンテンツを作りたくなるんです。単純な繰り返しを永遠に続けるということは、実はかなり難しいことだったりするんです。
地道なチューニングこそがビジネスの命
では、結局どうすれば良いのでしょうかというと、ここでタイトルを思い出してみましょう。『大事なのは”変わってくこと””変わらずにいること”』です。これ、最初は意味がわかりませんでした。どちらも大事だ、っていうことですよね。人として本当に大切な部分は都会に染まってはいけないけど、かといって進歩を止めてもいけない、という意味だと理解しています。これ、ビジネスでも同じです。
絶対に譲れない部分、大枠をしっかり固めた上で単純な繰り返しで価値を提供し続けつつ、常に枝葉の部分は仮説検証を繰り返すんです。もちろん大枠を変えることもあっても良いと思いますが、それをちょこちょこ変えてしまうと信用を失います。逆に、テクニカルな枝葉の部分は仮説を持った上でどんどん変えていくべきです。継続的で地道なチューニングの努力こそが、ビジネスの命だということになりますね。