「ニーズを探るためにオンラインサロンを持つ」ことの危うさ
フラスコ代表、安田です。僕がフラスコを運営しているからかもしれませんが、これを言う人がかなり多くて。僕もスイッチが入っていない「雑談モード」のときは「良いんじゃないですか」と答えてしまうのですが。悪くはないけど実はちょっと違うんじゃないかな、という話です。
「まずオンラインサロンを持つ」という発想
ビジネスをするなら、しっかりとした「商品」が必要です。そのためにはターゲット、ペルソナ(理想の顧客像)を明確にして仮説を立てて、「商品」を開発する。これが大前提ではあるのですが、なかなかペルソナを絞り込めない、「商品」が作れないという人は多い。そういう中で、タイトルの発想に至るわけです。
僕はビジネスをやっている人はもちろん、サラリーマンや主婦であってもみんなオンラインサロンを持ったら良いと考えているので、「商品」がない状態でもオンラインサロンを持つことはありだと思うのですが。ただそれが「ニーズを探るため」だとちょっとどうかなと。一見良さそうなんですけどね。
最大公約数を取ると、売れない
ターゲットが絞り込めないままオンラインサロンを作ると何が起こるかというと、知り合いが集まります。お友達とか、ビジネス交流会で会って意気投合した人とかがとりあえず入ってくれる。で、そこで「どんなニーズがありますか?」と質問をすると反応がないか、あってもばらばらでかつ薄いニーズが集まります。
例えば「コーチングをしているが、なかなか売れない」「気軽な相談に乗ってくれる人がいると良い」という意見があり、これはいけると思ってコーチと相談者のマッチングサイトを作ってしまう・・・みたいなのが典型的な間違いです。こうして客観的にみるといかにも薄いなと気づけるはずなのですが、サロンメンバーからあがってきた要望と考えると、深い意味があるように誤解してしまいがちなんです。
実際にそれを作っても、おそらくはその意見を言った人たちですら使わないでしょう。無料とか極めて安価なら使ってみてくれるかもしれませんが、せいぜいそこ止まりです。もともと大して痛みがない、燃えるようなニーズがないんですよね。例外はないとは言いませんが、だいだいこれが起こります。
ヘンリー・フォードの話
新しい商品を作りたいのであれば、参考になる話があります。自動車王、ヘンリーフォードの名言です。
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。」
当時はみんな馬車で移動をしていたので良い馬は欲しいと思っても、蒸気の力で動く自動機械なんて誰も求めていない。想像すらできないものを作るなら、ニーズ調査は意味がないんですね。まあこれはスタートアップ、イノベーションが必要な分野の話ではあるのですが。
スモールビジネスであればそもそもそんな革新的な「商品」を開発する必要はないので、ニーズがあるとわかりきっていて誰かがやっていることをほぼそのままやれば良いのですが、それでも尖った「商品」を作りたいと思うなら、この話は参考になるでしょう。
仮説としてのペルソナ
ビジネスを始めるならマーケティングリサーチが必要だと思い込んでいる人が多いのですが、ことスモールビジネスならそんなことはありません。ペルソナを作り、そのペルソナの課題を想像し、仮説としての「商品」を作って、それを世の中に届けていくことで実験をしていくと良い。
そのときオンラインサロンを持っているのは、有益です。そこでさまざまな仮説を検証するための実験ができるからです。「この商品が売れるかどうかわからない」と言って行動を止めてしまう人がいるのですが、まずはオンラインサロンで売ってみたら良い。
僕だったらサロンで売れないものは誰にも売れないと思うので、そこで新商品を試してみてダメだったら引っ込めます。絶好のテストマーケティングができるんです。ただ、これはフラスコビジネスアカデミーにはダーウィンを含めて50人以上がいるからできることなので、数名であればまたやり方は変わるでしょう。
ニーズを探ると実験をするの違い
「結局、ニーズを探るためにオンラインサロンを持つのは良いことなんじゃないの?」と思われたかもしれません。まあ結論だけ言えばそうなんです。ただし、オンラインサロンのメンバーに聞いてみて、それを参考に商品を開発しようというアプローチはちょっと危うさを含んでいますよ、ということが言いたい。
しっかりと考え抜いて仮説を作り、それをサロンで「実験する」ならそれは良い。とりあえず聞いてみて、なんでもやってみてニーズを探ろうとするならそれは危ういということです。サロンを作ったあと、迷走しているのを良く目にするので、入り口で考え方をしっかり伝えないといけないなあと反省します。
まあこれ「コンサルモード」に入っていたらできますが、「雑談モード」でこう言われたら、つい「良いんじゃないですか」って言っちゃうんですよね。とりあえずフラスコを使ってくれたら嬉しいし。ビジネス構築の上で最短ルートから外れて迷走してしまう可能性があるので、ここでお伝えしておきます。