「ペルソナなんて役に立たない」という人が抱えている5つの誤解
フラスコ代表、安田です。スモールビジネスにおいてはペルソナの設定が重要なのですが、「かつて他の起業塾でペルソナを作ったが、うまくいかなかった」などと苦手意識を持っている人が多いです。今日はペルソナについて、多くの人が持っているであろう誤解について解説します。
誤解1:ペルソナを絞り込むのは怖い
まずペルソナとは何かということから簡単に説明すると、「架空の人物として定義した顧客プロファイル」です。もっとわかりやすく言えば「製品やサービスに対する理想の顧客像」ですね。つまり、あなたのビジネスや商品を届けることで「誰を助けたいのか」を個人単位まで絞り込んでいくことがペルソナ作りです。
ターゲットとの違いは、幅がないこと。例えばターゲットであれば「30代、首都圏在住の情報に敏感な男女」みたいな感じである程度は絞り込みつつも幅を残しますが、ペルソナだと「38歳、埼玉県戸田市在住の男性、名前は安田修」まで絞り込みます。ペルソナは、ターゲットの中心となる1人まで絞り込むんですね。
この絞り込みという作業が思いのほか、怖いんです。どうしても「日本全国の老若男女誰でも」とできるだけ広くして、買ってくれる人を増やそうをしてしまう。そこまで極端じゃなくても「男性か女性か」を絞り込むことすら怖くてできない人が多いです。
ペルソナはあくまで中心なので、「男性」と決めたからといって女性が買ってくれないとか、女性にサービスを提供してはいけないというものではありません。むしろ絞り込むことで発信する情報が明確になり、ペルソナ以外の属性の人にも選ばれるようになります。逆に万人受けを狙った商品は、誰にも選ばれることはありません。
誤解2:都合の良い顧客像を設定してしまう
絞り込めないことに次いで、ペルソナ設定の誤解で良くある間違いは、これです。「お金を持っていて気前が良く、自分のことが大好きな社長」みたいな。何もしなくても売れていく、都合の良いペルソナを設定してしまうパターンですね。理想の顧客像という言葉に引きずられたものと思いますが、これは本末転倒です。
本当に求めている人に高い価値を届けるため、とがった商品を作るために設定するのがペルソナなので、「何でも買ってくれる」というペルソナでは意味がありません。あえてイヤな性格にする必要はありませんが、心の琴線はどこかを探るために実際に存在しそうな、納得感の高いペルソナを作りましょう。
誤解3:もっとも恵まれていない人を助けたい
そして、一見すると良さそうなのですが途中で止まってしまいがちなペルソナがこれ。「アフリカでお腹を空かせた孤児」みたいな、世界で一番苦しんでいる人を設定してしまうパターンもあります。人生の最終目標としてそういう人を救いたいという想いを持っておくのは良いですが、最初のビジネスとしては成立しにくくなります。
僕も「誰もが自由で、好奇心あふれる生き方ができる世界を創る」ためには最終的には子供だったり、開発途上国の人の役に立ちたいという想いは常にありますが、まずは日本のサラリーマンを救うことから始めています。フラスコだったり出版のおかげでもっと幅広い人のお役に立てるようにはなってきていますが、あくまで真ん中はそこなんです。
なお、ビジネスを展開する上でサラリーマンというのはターゲットとしては微妙です。動きが遅く、自己投資ができないので商品が売れにくいんです。企業やスモールビジネスをやっている人をターゲットにした方が、事業として成立しやすいです。でもぎりぎり何とかなるという判断のもと、想いを優先させてやっています。
誤解4:自分自身を救いたい
そんなわけで、僕自身のペルソナはサラリーマンだった38歳の頃の自分、「過去の自分を救う」というペルソナ設定の仕方をしています。なのでどうしても僕のところに来てくれる人は同じように「過去の自分」をペルソナにしてしまいがちなのですが、このやり方には気をつけないといけないところがあります。
まず、ペルソナも自分で商品を作るのも自分、となってしまうとペルソナとの対話が発生せず、商品設計が「ひとりよがり」になってしまいやすいということです。自分だけが納得すれば良いという商品、自分だけがわかれば良いという情報発信となりやすい。まあここは、僕が入ることで緩和できるとは思いますが。
そして、「過去の自分を救う」ならやり方としてはありだしむしろ有力だと思うのですが、それはあなたに辛い過去を乗り越えてきた実績があるからです。その方法なりマインドが、同じような悩みを抱えている人を救う原動力になるということです。なので、その辛さをまだ乗り越えていない「今の自分を救う」となると、それはまだ人を救っている場合ではないでしょ、となってしまいがちです。
誤解5:ペルソナは唯一不変である
正直、過去にペルソナ設定でうまくいかなかったという人の多くは、シンプルにペルソナ設定がヌルかったんだと思います。ここに挙げたような誤解にはまり込み、ペルソナらしきものを設定したけれどそれはペルソナとして成立していなかったのだろうと。あるいは、ペルソナがしっくり来ずにその後の商品作りなどのフェーズで止まってしまったか。
ペルソナはあくまでマーケティング上の仮説であり、一度設定したら絶対に変えてはいけないものではありません。作り込みが足りなければもっと深掘りすれば良いですし、しっくり来なければまたいちから作り直せば良い。その試行錯誤、PDCAのサイクルが回っていなかったということなのではないでしょうか。
僕自身、新しい商品やセミナーを提供するときには「これは32歳のサラリーマン向けにしよう」とか「これは45歳、個人事業主向けにしよう」などとペルソナを動かすことはあります。ペルソナはあくまで仮説でありツールなので、うまく使えば良いだけです。ペルソナが役に立たないのではなく、あなたが使い方を間違っていただけなんですよ、多分。