起業をするのは良いとしても、「今すぐ」会社を辞めるのはお勧めしない
フラスコ代表、安田です。起業の相談を受けているので当然ですが、「(今すぐ)会社を辞めようと思います」という人は結構います。でもほぼ全てのケースで、すぐ会社を辞めて起業をするのはお勧めできません。
背水の陣はデメリットが多い
「起業をするからすぐ会社を辞める」という背景には、大きく分けて①会社が嫌だから早く辞めたい、②背水の陣を敷いて自分を追い込みたい、の2つの理由があると思います。しかしどちらの理由であっても、すぐ会社を辞めるべきケースはほとんどありません。
もちろん、起業の準備が万全に整っているのならすぐに会社を辞めても良いのです。でも私がお話を聞く限り、そんなケースはとても少ないのです。もし起業をしてすぐに収入が得られる状態になっていないのなら、絶対に会社に残りながら、起業準備を進めた方が良いです。
そういう人はだいたい「サラリーマンをしていると起業に使う時間がない」なんて言うのですが、その時点で起業するだけのタイムマネジメント能力がないのかもしれません。会社を辞めたら貯金は減り始めて、生活費を稼がないといけなくなるので、むしろ時間はなくなります。背水の陣の最大のデメリットはそれです。
副業が許されている時代なのだから
会社を辞めて収入がなくなり貯金が減りはじめると、あなたの想像以上に焦ります。「あと何ヶ月で資金が尽きる・・・」などと考え始めたらもう、大きく構えたビジネス展開はできなくなります。どうしても目の前の小銭を拾うだけの、近視眼的なビジネスのやり方になってしまいます。
私が起業した頃は(と言っても9年前ですが)副業が許されていなかったのですが、今は大企業であれば副業が認められていますので、会社に残って安定した給料をもらいながら、じっくりと起業準備を進めれば良いのです。副業である程度は稼げるようになったら、本業をどうするかを決めたら良いのです。
仮に副業が禁止でも
そう言うと「いや、うちの会社は副業が禁止だ」「公務員だから副業はできないんだ」という反論が飛んでくるのですが、やや暴論は承知で本音を言えば、今すぐ辞めるくらいなら会社にバレるまで副業をやれば良いのにと思ってしまいます。バレても解雇まではされない可能性が高いですし、クビになっても元々じゃないかと。
もう少し穏やかな意見だと、まずは転職をすれば良いでしょう。多少給料が下がっても良いから、副業ができて残業が少なめの会社に転職すれば良い。「私なんてもう、どこも雇ってくれません」と言われると、いやさすがにその状態では起業しても厳しいかなあ、と。なら今の会社に感謝をして、お仕事を続けた方が良いのでは。
起業をすると「自分を売る」という要素が占める割合はサラリーマン時代よりもはるかに高くなります。まずは社内で認められる実績を出すとか、転職できるくらいの尖ったスキルなり特徴を身につけるところから始めれば良いのではないでしょうか。
安田は起業準備に1年かけた
ちなみに私の場合は、起業準備には1年間かけました。副業禁止の状態での起業準備でしたから、基本的には顔出しなし・原則無料でビジネスの実験を繰り返し、退職が近づいてからは有料のセミナーやバックエンドのセールスなどもやっていました。まあ、会社にバレても怒られるほどの金額は稼げませんでしたが。
そうなんです。ゼロから起業をした場合、1年くらいやったところで、普通は大して稼げないんです。起業をするのは楽観的な性格の人が多いので「初年度でも数百万円くらいは稼げる」という甘めの事業計画を作りがちですが、最初の数ヶ月間は売り上げがゼロとか、割と普通にありますよ。
数ヶ月間収入ゼロで、他に何の収入もない状況を想像してみて下さい。めちゃくちゃ怖いですよ。1年くらいは、副業としての助走期間を取るべきです。最初は全力で走ったとて空回りするので、大した収入は得られないことが多いというのは、やってみたらわかります。
むしろ起業してから、時間がかかる
9年やってきて思うのですが、ビジネスというのは信用の積み重ねです。何年もかけて少しずつ、信用が集まって安定してきます。運良く1年目からある程度の売り上げが経っても、これはサラリーマン時代のつながりがあった人からのご祝儀的なお仕事が多かったりするので、2年目・3年目と売り上げが落ち込んだりすることもざらにあります。
起業をした人なら誰でも資金繰りの大変さを1度や2度は、いやもしかしたら常に、感じているものです。サラリーマンとしての安定収入があったらどんなに良いか。じっくりビジネスを組み立てることができるメリットは、「本気になれない」デメリットを大幅に上回ります。
まあ、「じゃあ安田はサラリーマンに戻りたいのか」と言われたら絶対にそんなことはありません。もうあんな生活はできません。なのであなたが会社を辞めたい気持ちは重々理解できます。それでもなお、副業で立ち上げるという選択肢があるなら、それを真剣に検討してみて下さい。「今すぐ」辞めるのはきっと、間違いです。