効率を追求した果てに見えてくる景色
フラスコ代表、安田です。「楽をするためならどんな努力も厭わない」という矛盾に満ちた感じで起業以来8年間、走り続けてきました。結果、たどり着いた境地について書いてみます。
今までやってきたこと
私も起業前、サラリーマン時代は忙しく働いていました。心身の健康を害して亡くなってしまう先輩なども目の当たりにする中、このままこのゲームを続けても幸せにはなれないと痛感し、起業を決意します。あとに続くサラリーマンを救おうと、フラスコやビジネスアカデミー、ダーウィンなどのサービスを順次リリースしてきました。
起業支援では一般的である少人数の講座やダーウィンのような個別サポートでは料金も高くなりますし、ごく限られた人数しかサポートできないという制約があります。料金が高いことで諦めてしまう人も増えるでしょう。そのため、フラスコやアカデミーといった「仕組み」でのサポートを提供し、本を出版することで多くの方にきっかけをつかんでもらおうと工夫を続けてきました。
ビジネスでもっとも時間・エネルギーを使ってしまう集客をとことんまで自動化・効率化することで、コアの個別サポートやコンテンツ作り・執筆・セミナーといったことに時間・エネルギーを避けるように工夫を続けてきました。どうやら自動化や効率化は得意らしく、それをとことんまで進めた結果、ちょっと困ったというか、変なことが起こりました。
ここしばらく、退屈している
それは「退屈」です。価値の高い時間の使い方にフォーカスして、価値の低い部分を自動化・効率化を追求していくと、膨大な時間が生まれます。と言っても、そんなにすごく稼いでいるわけではないのですが。なら効率が悪いこと、例えば低価格で相談に乗るとかそういうことをすれば良さそうなものですが、高額でサポートしている人との公平性が保てなくなってしまうのでできません。
そもそも「必要な金額をきちんと稼がなくては」とは思うものの「もっと稼ごう、どこまでも稼ごう」というマインドが私にはありません。子供たちを大学くらいには行かせてあげたいし、家族に美味しいものも食べさせてあげたい、まあ旅行くらいは行きたいですが、そんなに物欲もないですし。なのでもう少し稼がないといけないけれど、暇だな、退屈だなという変な状態にあります。
「人類は暇になる」という確信
個人的にはケインズの予言はそろそろ実現しつつあると感じていて。食うために働くとか、生きるためには働かなくてはいけない、労働は美徳、みたいな時代が思ったよりも早く終わるんじゃないかと。サラリーマンですら「働き方改革」と銘打って労働時間をどんどん減らしているじゃないですか。生産性という表現をしていますが、要はそれほど人間の仕事がなくなってきている。
いやこの話、「お前はもっと働け」「飢餓の問題はまだまだある」「低賃金で長時間労働をしている人がいる」というような反発を受けることが見えているのでとても書きにくいのですが。労働は美しいものであるという思い込みというか。私としては、忙しいこと自体はあまり善ではないなと思っていたりして。伝わりにくい話だとは思うのですが。
マクロで見ると実際、飢餓の問題は解決に向かっていて。確実に人類は豊かに、暇になりつつあります。個人的に効率化が得意だったこともあり、人よりもそのことを敏感に感じているかもしれません。どうしても人間がやらなくてはいけないという種類の仕事が、どんどん減ってきています。人を雇うメリットも減っていますし、自分自身の作業ですらそうなのです。
AIでこの流れは決定的になる
しばらくそんな日々を過ごしていたのですが、そこにやってきたのがAI革命です。ここ半年くらい、特に直近1ヶ月くらいのAIの進歩は凄まじいですよね。もちろん水面下でとか私が知らない専門的なレベルでは少しずつ進歩してきたのでしょうけれども、最近のChatGPTやBingのチャット機能は衝撃的でした。かなり普通に、AIとの対話ができるようになっています。
画像処理などは進んでも、自然言語処理や汎用人工知能はまだまだ時間がかかるだろうと思っていたのですが、世界のデータ量が増えたことで急速に精度が上がってきました。AIがバズることで人とAIの対話のデータは増える、つまりデータ量は加速度的に増えるので、想像を遥かに上回る速度で爆発的にAIは成長しそうな気がしてきました。
効率追求から好奇心の追求へ
AIが自然言語でのコミュニケーションをこなしてしまうと、人間固有の仕事はますますなくなります。私がやっているコンサルティングやコーチングの仕事も、AIに大部分を任せることができるかもしれません。ビジネスの効率化・仕組化なんかも、AIの得意領域でしょう。情報発信や執筆についても、ある部分は確実にAIに代替されていくでしょう。
自分自身の経験として、ビジネスを効率化するために努力や工夫をしている間は楽しいのですが、実際に全てが効率的になって暇になるとなんとも言えず、退屈になります。こんな気持ちを、近い将来すごくたくさんの人が味わうことになるのだろうな、と少しだけ未来を見ているような気分になっています。仕事っていうのはある種、もっとも手軽な娯楽なんですよね。
私のやっていることで言えば、「自由と好奇心」のうち最初は自由を手に入れるために試行錯誤をするのですが、その実現が見えてくると好奇心が重要になります。その意味、AIは好奇心を満たしてくれる分野ではあります。もちろん自由あっての好奇心なので、まずは稼げるようになってそれを効率化・仕組化して自由になるのは重要なのですが、その先にはまた違った景色があります。
まずは私が自由になるお手伝いをした方々のために、そして将来的には暇になるであろう全人類のために、そろそろ好奇心を満たすためのサービスを提供していこうかななんて考えている今日この頃です。