夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。
今回は経営者インタビュー第二弾、私も入居しているインスクエア池袋の運営会社、アットオフィスの大竹社長にお話を伺ってきました。大竹社長はストックビジネスのプロであり、起業家支援のマインドも強く、ラーメンチェーンの立ち上げを経験されるなど、異色のキャリアの持ち主でもあります。
お人柄も魅力的で、本当に良いお話を色々とお聞きできましたので、お楽しみ下さい!(写真はインスクエア池袋にて撮影しました)
細かいことの積み上げが、圧倒的な差をつける
シナジーブレイン安田(以下Y):まずは、御社の事業について簡潔に教えて下さい。
アットオフィス大竹社長(以下O):オフィスビルに関連する悩みを解決し、ビル所有者の収益を最大に高めるというのが我々の立ち位置です。
入居者を探してきて入れる、改装してアットビジネスセンターという会議室にする、またはインスクエアという大人のレンタルオフィスにする、そういう複数の選択肢を持っており、オペレーションを全部自分たちでやるのが強みです。
そのビルにとって一番良いことは何かを考え、過去のデータの蓄積から最高の提案ができる。同じことを総合的に行っている会社は世の中にありません。
Y:レンタルオフィス自体はありますよね。発想の出発点が違うということでしょうか。
O:そう、発想のベースが違います。加えて我々はマーケットを分析する力、資金の調達力、サービスをパッケージとして仕上げて世に出す能力を全て持っており、他社よりも良い結果を出すことができる。見えない部分で細かいことをたくさんやって、差を付けています。
例えば会議室では、リピート率が60〜70%と間違いなく業界トップクラスです。レンタルオフィスでも、業界としては過当競争ですが、もう2年間、個室は100%稼働を続けています。
Y:細かいことを積み上げることが、その差を生むということでしょうか。
O:私は、ビジネスは全て3・3・5だと言っています。つまり、3年は準備期間、3年は成長、5年でなだらかに下っていく。これは過去に経験したラーメンFC事業でもオフィス事業でもあまり変わりません。10年経てばサービスの賞味期限が過ぎます。
結局、競合に真似されてしまうということでしょうね。準備期間は良いが、成長し始めて2年くらいで競合に気付かれて、前例があるので1年くらいで追いつかれます。それが衰退の原因でしょう。常に新しい事業を考えること、既存の事業をチューニングして価値を維持することが経営者の仕事ということになります。
アットオフィスでも、事業ごとに毎年1個ずつ「種まき」をしています。例えばインスクエアだったら、「起業家のリスクを減らす」を理念に、人を雇うタイミングで失敗しないようなサービスを提供しつつあります。
事業が伸びる、人を雇う、その人が辞める、地獄を見るという流れです。スモール起業の経営者は人を雇って仕事を任せ、自分は営業することによって仕事が2倍になりますが、そこで人が辞めると、仕事量は2倍になって人が自分しかいないという状況になります。社員1人のインパクトが大きすぎて、凄くリスクがあります。
Y:うわあ、目に浮かぶようですね。
O:そこで、人を雇う部分を我々が代替してあげる。電話とか、細かな事務作業を引き受ける、それも変動費で受けます。そうすると、人を雇うタイミングが後にずれるはずです。人を雇った後も電話の応対はアウトソースしたまましておけば、雇った人に余裕もできるし、バッファができるんですね。勿体ないから1人の社員になんでもさせる、電話も取らせる、ということをやると大きな負担がかかり辞める可能性が高まります。そんな器用な人はなかなかいませんから。
Y:すり減っちゃうわけですね、その人が。
O:そう。バッファを残したまま、人を雇うのが良いと思います。従業員一人だと追い込まれやすいし、私たちのアシスタントともやり取りが出てきて、コミュニケーションも発生します。孤独ではなくなりますから、辞めにくくなります。こういうベーシックな部分は本当に必要だと思うし、実際に利用者の方からは重宝がられています。
「40代の起業支援」と破綻する国家財政
Y:私も利用させて頂いていますが、インスクエアの「大人のレンタルオフィス」というコンセプトは特徴的ですよね。どういうアプローチでの発想ですか?
O:インスクエアのメインターゲットは30歳代から50歳代(ミドル世代)で、実績としてもそうなっています。
この国は長期的に就労人口の減少が止められませんから、オフィスビル需要が厳しくなるのは明確です。一方で、起業する人の数は減っていない。激増はしていないが、傾向としてじわじわ増えています。これは、働き方が変わってきているからです。
大きな転換点としては2つあって、①パソコンからクラウドになった。②景気が悪くなった時に「自分で自分の道を拓かないといけない」という風潮になった、加えてアメリカのフリーランサーは34%、日本は2%台という差異がある。(「Freelancing in America: A National Survey of the New Workforce」米国Freelance Union、Elance-oDeskと共同調査 2014年9月3日発表)
Y:ずいぶん違いますね。
O:国内でも働き方は確実に変化していきます。会社に雇用されない人は増えていくという予測が立つ。そのとき、起業している人の分布図を調べていくと、40歳以上が6割を占める。「この人達が成功しないと日本は元気にならない」ということで、ミドル世代の起業を応援することに決めました。つまり大人の起業です。
40代の起業は小さな子どもを抱え、めちゃくちゃ怖いですよね。シニアの起業も良いことだとは思いますが、応援するパッションを感じるのはミドル世代の起業です。それは彼らが本気だからです。リスクが高い中で、それでも強い思いを持って独立したのなら、サポーターの役割を担おうと決めた。独立した後のサポートが私たちの仕事です。
皆さんあまり気付いていませんが、起業の最大の強みは「定年が無いこと」です。生涯年収で考えると、起業家の方が最後のゴールが絶対遠いので実はサラリーマンよりも有利です。安田さんは、老後は年金で生活できると思っていませんよね?
Y:全く、思っていないですね。
O:皆さん、それが不可能であることはわかっているはずなんです。年金で生活できると思っているのは今60歳以上の人だけで、この人口の逆ピラミッドのなかで、今の医療保険制度や社会福祉制度が維持できるはずがありません。赤字国債をこれだけ発行していたら、国家財政は100%破綻します。
Y:私もタイミングはともかく、国家財政は破綻すると考えています。
O:100%、破綻する。つまり年金が無くなる。そんな中で幸せな家庭を維持したいのであれば、起業しろということなんです。失敗しない起業の仕方というのはあると思いますし、本当の勝敗は60歳以降に判ります。だから今、起業という決断をした安田さんは「勝ち組」なんですよ。
Y:事業を軌道に乗せることができれば(笑)。
O:それはそんなに難しくないです。あと30年で平均寿命が100歳を超えるということが公に言われていますが、平均寿命が10歳伸びたら国家財政は破綻します。わかっているのになぜ見ない振りをして走るのか。
実は4年前に、経産省に大人のレンタルオフィスの企画書を持って行ったことがありますが、それはサラリーマンから起業して、年金を貰わずに生涯働くことだという内容でした。そうなれば問題は全てクリアされ、世の中が変わります、と。これには起業の数が増えないと、自分たちの子孫が繁栄できないとわかりきっているから、やっている仕事です。
なぜ40代の起業支援にフォーカスするかというと、他にやっている人がいないからということもあります。若い人に起業の楽しさを教える、もしくはシニアや女性の起業を応援する人は多くいます。しかし、ミドルの起業を支援する人がいないのは、それが「重たい」からです。責任が大きい。だけど、これができなかったら本物じゃない。5年、10年と時間がかかっても、生涯をかけてやり続けたいと思っています。
Y:非常に共感します。私も退職後のことを考え、サラリーマンをやっているのが怖くて起業しましたし、世の中を変えるにはそのゾーンが起業をしないといけないと考えています。
O:40代で起業して事業が成功するのに一番必要なものは「信用」ですから、私たちの行動基準も起業家の「信用」を高めることです。レンタルオフィスも千差万別ですが、お客様が来た時に信用が上がる施設を作りました。何をやるにしても、信用を上げることがベース。
例えば、一般の電話代行事業者は電話をできるだけ効率よく早くさばくことで利益が高まりますが、私たちは、そこで電話をしてきたお客さまと雑談ができるくらいでないといけないと考えるんです。コストを最小化するのではなく、信用を最大にする。社長はいるかと聞かれたら、「ちょっと見てきます」とか。実際に見に行くわけではないですけどね(笑)。
Y:電話の相手は「きちんとした会社だな」と感じますよね。面白いですね。
O:そうしないと40代の起業家は満足してくれません。楽しいことをやるのも大事ですけど、利用者の方が信用を失うことは絶対やってはいけない。施設も華美ではありませんが、有名デザイナーとコラボして本物の質感にこだわっています。
(プロフィール)
大竹 啓裕(おおたけ・たかひろ)1963年生まれ
株式会社アットオフィス代表取締役
ブログ:http://ao-ceo.jugem.jp/
出身:福島県
[ 業歴 ]
1993年 セコム
1995年 オフィスビルデベロッパー
1998年 グロービートジャパン株式会社創業に参画
[ アットオフィス ]
2006年 オフィス仲介事業(オフィスポータル)
2007年 オフィスビルPM事業(空室対策)
2008年 アットビジネスセンター(会議室事業)
2012年 インスクエア(大人のレンタルオフィス)
2012年 アットパーキング(駐車場ポータル)
2014年 テレアシスタント事業
[ その他 ]
2012年 非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会 副理事長就任
※インスクエアのインキュベート支援実証として参画
(アットオフィス運営事業公式サイト)
アットビジネスセンター http://abc-kaigishitsu.com/
インスクエア http://www.in-sq.com/
アットオフィス(オフィス探し)http://www.at-office.co.jp/
アットパーキング http://www.at-parking.jp/
テレアシスタント http://www.in-sq.com/tel/
オフィスビル空室対策 http://www.ao-pm.jp/
【後編に続く】