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信用の器 フラスコ

【経営者インタビュー】株式会社アンテレクト藤井孝一様(後編)

夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。

前編中編に引き続き、株式会社アンテレクトの代表取締役社長にして著名な著者でもある藤井孝一氏へのインタビューをお届けします。中編は自社を大きくすることの自家撞着、起業家を組織の中に閉じ込めるな、というお話でした。今回はついに、最終回(後編)です

長期ビジョン実現に向けての課題

Y:ビジョンのお話に戻ります。「2020年に200拠点」を進めていく上でネックになるところ、課題になっていることはどんなことがありますか。

F:数を揃えるのは簡単ですが、その人達が皆さん経営基盤を確立することが本当の課題だと思っています。そのためにはコンテンツを磨いていかないといけないでしょうし、支援もしていかないといけないとも思っています。

たとえば、動画コンテンツ、eラーニング的なものも必要だと思っています。世の中eラーニングが中心になっていくことは間違いありませんので、当社の200拠点が、リアルの拠点としてそれをサポートして、相互に活性化する関係になればいいと思っています。

あとは拠点をやる人の人選・指導もしっかりやっていきたいなあと思います。今までは、やりたいという人にはやらせてあげて、ダメだったらダメだったでしょうと、ある意味本人任せでした。まあ起業とは本来そういうもので、それで良いかと思っていたのですが、こちらが「200拠点やる」と掲げた今、ある程度責任も伴ってくるので、サポート体制をしっかりやらないといけないと考えています。声を掛ける人も厳選していきたいですね。

最近、私たちは「教えられる人に教える」ことに力を入れています。今までは「学びたい人」にどんどん教えていたんですが、最近はその中でも「将来、教える人になれそうな人」に教えることに力を入れています。たとえば、開業繁盛塾はまさにその典型です。ここで学ぶ人は全員が先生になれると思っています。人材発掘の場です。コンサルタント養成講座もそうです。コーチングも最近は「コーチングを教える人」を育てることに力を入れています。

Y:何となくですが、わかります。

F:週末起業をやりたいという人も、当社で学んだ人達に先生になっていただいて、新しい人に教えていただくという風に変わってきています。本部で教えるのは、「教える人を教える」というコンテンツに絞ってきています。

200拠点を実現する、教える人の育成が急務だからです。200拠点を質も伴ってやるには200人ではなく、600人くらい候補者がいないとダメだと思うので、まだまだやることは一杯あります。

Y:現在は週末起業フォーラムの会員が2千人と銀座コーチングスクール認定コーチが1千人弱くらいですかね。人材のベースとしてはそれが全体のパイで、そこから、教える人になる人達を育てるというイメージでしょうか。

F:そういうイメージです。教えることに興味のある人は、他にもたくさんいます。ただ、そういう方には、まずは週末起業や銀座コーチングスクールのコンテンツを、学習者として一通り学んでいただきます。興味のある人がいれば、まずは教えるものを学んでもらうということですね。

Y:壮大な計画ですね。人以外にも課題はありますか。

F:あとは、マーケティングです。地方にいくと私たちの知名度は高くありませんので、如何に知ってもらうかが課題です。東京界隈では、週末起業、銀座コーチングスクールはそれなりに知られているのですが、地方にいくと「そもそもコーチングってなに?」という世界です。

Y:そういう人達にはどうやってアプローチされているんですか。北海道にいる人がそういう情報に触れることができるかというと、正直ちょっと想像がつかないのですが。

F:今は、残念ながら教える人達が中心になって、熱心に口コミとか、独自のネットワークを活かして交流会など足で稼いでくれています。もちろん、それは大事なことですが、それだけでもダメです。空爆ではないですけど、新聞・雑誌とか、何かマスの媒体も使っていく必要があると思います。

SNS、ブログやメールマガジンはずっと使ってきました。これらは、全国レベルのツールですが、まだまだマスにまではアプローチできないんです。

Y:興味のある人はアクセスしてくれるが、興味を持たせることはできない。

F:アンテナの高い人達と接点を持つには便利で、だからこそ、私たちはこうしたツールを用いて、「教える人」との関係性を全国に作ってきました。今度はその人達が地場で生徒さんを見つけるお手伝いを私たちがすることを考えると、今のところ限られています。検索エンジン対策などはやっていますが、そういうのが通用しない世界については、研究しないといけないと思っています。このあたりが課題ですね。

Y:話が少し飛びますけど、2020に200拠点という数字を思いつき、というと失礼ですけど、それを思いつかれたキッカケは何かありますか。オリンピックイヤー、5カ年計画というところは何となく想像できるのですが。

F:思いつきです(笑)。と言っても全く根拠のない数字ではなくて、今まで当社がやってきたことプラス色んな英語教育とかスポーツジムとかの展開などを参考にしつつ、それらと比べると社会人教育は小さいマーケットなんですけど、これくらいの規模かな、というのを弾き出したりとか。最初は思いつきで、後から数字を検証したという感じです。

Y:藤井社長も森副社長も、コンサルタントですからね。もう、実現は見えていますか。

F:やはり、数はいけても質が大きな課題です。週末起業・コーチング・読書会・アントレプレナーズネットワークに加え、新コンテンツをどんどん追加していかないと、地域に即した展開ができないのかもしれないですね。

Y:今挙げられた4事業は、200拠点全てでやるイメージですか?

F:拠点に応じて、選んでもらえば良いと思います。自分はコーチングだけやりたいと言う人は、それでも全然構いませんし、週末起業もやりたいとなれば、それもやっても良い。ただ、その選択肢が4つしかないと寂しいので、不動産とかネットビジネスとか、バリエーションがもっとあると良いと思っています。

Y:アンテレクトという看板を掲げるという感じでもないですよね。フランチャイズのようなイメージですか?

F:そうです。どちらかというとブランドは週末起業や銀座コーチングスクールです。ただ、将来的にはプロデュースドバイアンテレクトのような感じで、ここが作っているコンテンツですというようにしていかないと、拠点を始める人が苦労するのかなとも思っています。

アンテレクトというブランドをもっともっとメジャーにして、是非名前を使わせて欲しい、と言われるくらいでないといけないでしょうね。

アントレプレナーズ・ネットワークについて

Y:以前、藤井社長は「吹きこぼれ」という表現をされていましたが、そういう、起業を果たした人達はアントレプレナーズ・ネットワーク(EN)という形で束ねられているというように思いますが、御社のビジョンとの関係はどのような絵になりますか。

F:ENは、すでにネタもあって事業も始めている、でも今の事業で固まるのではなくて、他の業種の人達と協業して人間的にも事業的にも成長するというコンセプトです。そういう人達には、私たちがノウハウを教えたりするより、場を提供して盛り上げていくことが必要だと思っています。

それを、東京でまず成功させて、いずれは全国でやっていきたいということです。それが、200拠点が取り扱うコンテンツの選択肢の一つになることが私の夢です。

Y:全ての拠点で「選択肢」になれば良い。

F:そうです。全てでやる必要は無いと思いますが、択肢の一つになれば良いと思います。安田さんは実際にENに参加されていてどうですか。

Y:ポテンシャルは非常に感じます。参加することで互いの紹介や協業が活性化し、ビジネスが加速してくのは間違いありません。一方で、あれは参加者の能力や魅力で成り立っている部分があり、仕組みだけではないなとも思います。質の高い起業家がどれだけたくさん出てくるかという点にかかってくるかと。

F:その通りで、仕組みだけではダメです。だから、展開をあまり急ぐ必要は無いと思っています。ENのメンバーもそうですが、価値観の合わない人をコミュニティに入れないように、というのはこれまでも凄く気をつけてきました。週末起業は典型的で、「副業なんて金儲け」ということになりがちです。FXとか、アフィリエイトとか、ただ金を儲ければいいというのとは一緒にしないで欲しいですね。

週末起業フォーラムは、それなりに認知されていますので、当社と「組みたい」という話は良く来ます。しかし、価値観が合わないということでお引き取り願っている例はたくさんあります。価値観を共有できるということは凄く大事にしています。そうすることで、胡散臭い副業スクールとは一線を画すようにしています。

ENでも、いつも冒頭で「先義後利」とか理念を確認しますよね。毎回、しつこいくらいに価値観を言わないとずれてきます。会社でも同じで、私たちはアンテレクト憲章というのを作り、使命・あるべき姿を毎朝の朝礼で唱和しています。さらに、それが単なるお題目にならないように、憲章に書いてあることを実現するために、自分が具体的に何をするかを朝礼で発表してもらったりしています。

そうしないと社員同士でも間違いなくずれてきます。すると、今後は価値観のずれている人が入ってきたりします。間違って入った人は、会社を引っ搔き回した挙句、辞めていきます。価値観の違う人を組織に入れないことは、人を採用する上で、とても大事なことです。

人との縁が会社を成長させる

Y:自浄作用になるんですね。弊社も人を雇う際にはそうしますし、コンサルティングをやっていく上でもその点は伝えていこうと思っています。

F:うちは設立当初から組織図があったり、憲章があったり、会報誌を出していたり、事務所をちゃんと持っていたりとか色々、それなりにやっています。こういうのは(副社長の)森がいてくれたことが大きい。彼は、当社に副社長として参画するまで、プロのコンサルタントして15年以上のキャリアを踏んでいます。

その中で、たくさんの中小企業を見てきています。その経験から、私たちが将来必要になるものが分かっていました。それを最初から作っておいたことがものすごく大きいと思います。私がああやりたい、こうやりたいと言うと、そのために必要なことを、いつも森が教えてくれ、一緒に形にしてくれる。そういう関係でやってきました。

Y:良いコンビですね。ホンダみたいです。最初に森さんを引っ張って来られたんですよね。

F:引っ張ってきたわけではありませんが、私から誘いました。もともとは、私が彼の生徒だったのですがちょうど彼も勤めていたコンサルティングファームから独立することを考えていたので、じゃあ一緒にやりましょうと声をかけました。その後は、本当にずっと二人三脚でやって来ました。

このような出会いは、誰にでもあると思います。だから、人との縁とか出会いは絶対に疎かにしてはいけないですね。きれいごとを言っているようですが、本音です。当社も良い人との出会いのたびに大きくなっています。たとえば、現在、主力事業のコーチングスクールももともとは森が自分の会社で立ち上げた事業ですから。

Y:天性のコンサルタントであり、事業家でもある森さんを、どうやって引き込んだんですか。どんな口説き方をされたんですか。

F:口説いていないですよ。森の方が、私をこのまま放っておいたらダメになるだろうと思ったんじゃないですか(笑)。彼のコンサルタントとしての使命感じゃないでしょうか。ただ、森との出会いがなければ、今の会社がなかったことは間違いありません。どれだけ感謝しても足りないです。

Y:良いお話ですね。では、お時間も迫って参りましたので、名残惜しいですけれども最後に、読者に対してPRがあればお願いします。

F:私たちの「ビジネスパーソンの自立と成長を強力にサポートするために、全国200の拠点目指す」という志に共感して頂ける方は、ぜひお声掛け下さい。講師ができます、ビジネスができますという売り込みは大歓迎です。

Y:本日はお忙しい中、貴重なお話を頂きありがとうございました!(前回記事はこちら

―プロフィール―

藤井孝一 株式会社アンテレクト代表取締役

社会人教育の会社アンテレクトを創業、経営し、ビジネスパーソンの自立を、教育、パートナーシップ、インフラなどの面から支援する。特に「在職中から起業する」スタイルを「週末起業」と名付け、その普及に東奔西走。1万人を超えるビジネスパーソンに起業ノウハウを提供し、開業に導く。

著書も多数執筆しており、代表作『週末起業』(筑摩書房)の他、50冊超。うち、いくつかは中国、台湾、韓国でも刊行されている。