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信用の器 フラスコ

独立しようとすればするほど、依存が深くなる

夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。

起業をしてから凄く不思議に感じていることで、起業家は皆、そもそも組織に依存したくないから起業をしたはずなのに、むしろサラリーマン以上にお互いに依存する感覚があります。これはなぜなのかと考えました。

依存を高めていると感じる事象

会社を辞めて、「さあもう自分には上司はいない、自由だ!」と思った次の瞬間、多くの起業家・経営者の方からお声がかかりました。無知な自分にモノを売ってやろうという人も中にはいましたが、多くは善意によるもので、起業家・経営者のネットワークへの参加のお誘いや、一緒に何かやろうというお声がけでした。

私の方は起業したてでピヨピヨしてますので、まだ悪意も善意も見分けがつきませんし、何より自分一人で思うように事業をやりたいと思って独立した矢先になぜここまで、こういう声がかかるのかと正直、面食らいました。そういう団体に属したり、誰かと一緒に仕事をするなら、会社に居ても同じではないかと。

組織に依存するのが嫌で、独立したいと思って会社を辞めた人たちが、なぜ好き好んで依存を強めるのか。当初はわけがわかりませんでした。でも何となく、「多分これは何か大事な意味がある、無下にしてはいけない」という風に感じました。直感というやつでしょうね。

起業家は不安である

まずネガティブサイドからいうと、一言で言うならこれにつきるでしょう。当たり前ですが経営者は、毎月決まった給料を貰えるわけではないので、何もしないと一円も貰えません。いわゆる「食えない」という状況になるわけです。家族に対する責任もそうですし、それ以前に自らが餓死することへの恐怖、これが根源にあるでしょう。

これはもう本能のようなものですし、幼い頃からの家庭や学校での教育でも刷り込まれています。大人とは、家族のために我慢して働いて、お金を貰って、ご飯を食べられるようにするものなんだよ、と。「ぱぱ、いつもおしごとしてくれてありがとう」と幼稚園に通う息子から言われたとき、もちろん嬉しかったですけれども、どこか「あれ、これはちょっと違うんじゃないかな」と感じたものです。

起業家とは「家族が食えなくなる、最悪は自分も餓死する」という恐怖心を振り払って、一歩を踏み出した人たちです。「食う」ためだけなら、サラリーマンをやっていた方が絶対に良いのはわかっているんです。それでも、もちろん成算もあってのことですが、不安定な世界に飛び込んでいるんですよね。それで不安でないわけはないでしょう。

不安だから、互いに依存し合うことによってリスクを少しでも減らしたい。正直、心理としてはあるはずです。相手のサービスにお金を払って、自分のサービスを利用してもらう、落語「花見酒」みたいな依存の仕方をしている自営業者の方を見て、「何なんだこれは」と思ったことがありますが、この場合は不安の解消が動機でしょう。

アライアンスの必要性

次にポジティブサイドですが、アライアンス(提携)を組むことによって多彩な、あるいは大きな仕事ができるということがあります。起業家はそれぞれ何かの分野のプロですが、その分野に拘っていてもどこかで伸び悩むところがあります。例えば、士業であれば資格の種類で単価の上限がある程度決まったり、集客に限界を感じたり

そういう時にアライアンスを組むと、大企業を相手にサービスを提供できたり、単価を上げられたりします。集客も、互いに抱え込んでいる潜在顧客を交流させることによって、互いにメリットが出たりもします。何より、自らの発想の幅が広がって、今まで感じていた限界を越えて事業を展開できることがあります。

大企業でも、事業提携をして行き詰まりを打破することがありますが、同じことです。小規模ではありますが、メリットは十分なリソースを持つ大企業同士でのアライアンスよりも遥かに大きいと感じます。「早く行くなら一人で行け、遠くに行くならみんなで行け」という言葉(出典不明。アフリカの諺?)がありますが、まさにそれですね。

依存してはいけないのか

しみじみ思うのは、自分一人でできることなんてたかが知れているということです。やっぱり50億円・100億円みたいな仕事をするなら、大企業の方が良い。でも自分の頭で考えて、やりたいことをしていくなら起業は必然です。それで、かつ大きなこともしたいなら、人を雇って会社を大きくしていく必要があります。

会社を育てて大きくするには時間がかかりますから、最初は起業家同士が手を組んで、アライアンスでやれることを拡げていくという選択肢が残ることになります。そして恐らく、会社の成長には終わりはありませんから、どこまで行ってもアライアンスは重要だ、ということになりそうです。

人間とはつまり、互いに協力し合って独力を遥かに越えたことを実現することにより他の生物を駆逐し、今まで発展してきた生き物なのだ、という壮大な結論に達するような気がします。誰にも依存しない完全な独立というのは、幻想なのかもしれません。それでは、また。