夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。
大企業を辞めて独立することは、経済的には合理的な判断ではないかもしれません。ではどうしてそんなことをする必要があるのかという質問への、一つの解がこれです。
タイタニック
もうかなり古いのですが、『タイタニック』という映画がありましたよね。一般的にはラブロマンスの代表的な作品として知られていると思いますが、端的に言うと、時代を代表する豪華客船が、氷山に衝突してなす術も無く沈む話です。私はあの映画を観て、感動したり興奮したりするよりも、むしろ恐怖したんです。
あんな大きな客船が、ちょっと舵取りを誤って氷山に衝突しただけで、真っ二つになって沈んでいく。乗客は、完全に安心しきって船旅を満喫しているわけです。今が危険なのかどうかすら、実際に氷山に衝突するまでわからない。これって、大企業に働いている自分と同じだな、と思ったわけです。
全米が感動で涙している中で、一人戦慄し、震えたわけですね(笑)。
会社の倒産を経験して考えたこと
金融機関で融資や投資の仕事をやっていると、目の前で会社が潰れることがあります。あ、誤解しないで頂きたいのは、私が「金返せや、コラァ」と追い込みをかける、みたいな仕事をしていたわけではありませんよ。債権者集会に出たりして、同じことをもっと紳士的にやるわけです(笑)。
一般の方と比べて、そういう機会は多くなります。ファンドにいて投資に関わった会社も、倒産しました。そういう、倒産する企業の原因は色々ありますが、多くの場合は人材の不足が致命傷だと考えます。今の自分なら、そういう会社を救えただろうか。そう考えたことが、私がコンサルを始めようと思ったきっかけです。
それは、おこがましい考えだとは思います。倒産する会社に私が入ったところでそれを防げるかというと、殆どの場合でそんなことはないでしょう。でも、少しでも舵取りの方向を良くして、最悪の事態に至る可能性は下げられるんじゃないかな、ということです。
少なくとも、優秀な人材は金融機関や大企業が抱え込んでいて、中小企業には驚くほど人がいない、というのは事実でしょう。大企業から中小企業へ、人材の流入が起こらないといけない。それは、コンサルタントという形が自然なのではないかな、と思うわけです。転職ではちょっと、報酬体系に無理がありますから。
豪華客船である大企業
いざ辞めようとすると強烈に気付くことなのですが、サラリーマンというのは非常に恵まれた身分なんです。最大の良さは、雇用と給料の安定性ですよね。これは起業・フリーランス側から見ればもう、「不公平」「ずるい」というレベルです。
必ずしも仕事に高い付加価値を付けなくても、高い給料が貰える。これはもう、サラリーマンではない人から見たら垂涎の的なわけです。更に、格安で借りられる社宅や福利厚生施設、手厚い年金に社会保険などなど、もう、過剰なくらいにサラリーマンは守られています。
更に、会計・税金関係や事務手続きなど煩雑なことはそれ専門の人が社内にいてやってくれますから、知識がなくても大丈夫です。そんな、至れり尽くせりの状態で、会社の看板を使って大きなビジネスに自分の専門性を活かして取り組めるわけです。社会的なステータスもあります。
豪華客船に乗っているのと同じですよね。会社の舵取りの心配は、基本的にはしなくていいわけです。舵取りをしたくても、できないというのが本当のところかもしれません。
なぜ大会社を辞めて起業をするのか
一つは、サラリーマンである限り人は「部品」に過ぎないということでしょう。私にとって「自分の頭で考える」というのは重要な価値観なのですが、それが大きな組織では許されません。上意下達、指揮命令系統に従って、誰かが考えた戦略を粛々と実行していくのが主な仕事です。
また、サラリーマンは愚かに保たれています。税金を例にすれば、自営業者には認められている節税が、サラリーマンにはほとんど認められていません。搾取されているんですね。税金の基本は「取りやすいところから取る」なので、これは至極当然の仕組みなのです。
税金に限らず、そういう大きな仕組みの中で政策的に、常にサラリーマンは愚かに保たれ、統治されています。例えるならば、サラリーマンは大船に乗った乗客であり、起業家は小舟の船長です。
どちらが良いというのは、価値観によります。これから海が荒れたとき、実際に生き残るのはどちらかといえば、何も考えずに大船に乗っている方だったりするのかもしれません。でも、船が沈んで全員が死ぬとすれば、大船の乗客は何が起こったのかすらわからないでしょう。小舟の船長は、最善を尽くした上で納得して死ねるでしょう。
私は、そこが決定的に重要なのだと思います。単に安定的に生きようとすればサラリーマンで良いでしょう。しかし、自分の人生に責任を持って生きようとすれば、起業家という選択肢は妥当であり、必然だと思います。
そんなわけで私は起業しましたが、皆さんはどのように思われますか。それでは、また。