夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。
今のような歴史的な低金利の中にあっても、「持ち家か、賃貸か」という古典的な議論には結論が出ていません。私はむしろ、家は買うべきではないと考えます。特に将来、起業をするのであれば。
不動産は買うのと借りるのではどっちが得?
まず基本的なことから始めますと、本質的に「家を買う方が得か、借りる方が得か」という議論には結論は出ません。なぜなら、市場原理的に、どちらかが明らかに得であれば得な方の価格は上がり、損な方の価格が下がることでその損得は調整されるからです。
トレーディングの世界では、このことを「裁定が働く」なんて言ったりします。買うと1億円の家が、月1万円で貸し出されていれば、どう考えてもみんな、それを買わずに借りますよね。そうして多くの人が殺到すると、今度は、もっと高く借りる人がいるかもしれないのでその物件の家賃は上がります。
2万円なら?3万円なら?・・・とどんどん価格が上がっていって、仮に月50万円で借りる人がいなくなったとします。そうすると、この物件は50万円弱で借りられる物件、ということになります。マーケットで価格が決まるというのは、つまりそういうプロセスです。
モノの価格と言うのは常に、売る方と買う方のどちらが明らかに得とは言えない水準で決まります。経済学っぽく言うと、需要曲線と供給曲線が接する点で価格が決まる、というわけです。なので、大多数の人が「買うか、借りるか、どっちが良いか迷うなあ」という点で価格は常に設定されているわけです。
言ってしまうと、あとは好みの問題だけです。買うのが好きな人は買い、借りるのが好きな人が借りる。それだけです。金利が低ければ低いなりに、インフレが起こるなら起こるなりに、やっぱり買うのも借りるのもどちらも魅力的という水準に価格が決まっているんです。期待を織り込んでいる、なんて言います。
なので、「買うのと借りるのでは、どちらが得か」という議論そのものが、ナンセンスなんですよ。どちらかが得でどちらかが損、という状況が放置されているわけがない(裁定が働く)んです。
で、前置きが長くなりましたが、結局は買うか借りるかは好みの問題だけです。もちろん、「世間は気付いていないが、自分は金利が今後、急上昇することを知っている」という状況なら、長期固定で借金をして家を買えば良いのですが、まあそんなことはほとんど起こり得ません。
起業家がマイホームを買ってはいけない理由
そして、もしあなたが将来的に起業を考えているならば、マイホームは購入すべきではありません。
理由は二つあって、一つ目は、起業というリスクを取るならば、生活の質をできるだけコントロールできるようにしておくべきだからです。事業がうまくいかないとき、立ち上げのタイミングはほぼ全てそうなのですが、その時は生活のレベルを柔軟に落とせるようにしておくべきです。
家を買ってしまうと、住宅ローンの返済額は固定されてしまいます。賃貸であれば、ボロアパートに引っ越せば家賃は大幅に抑える事ができます。成功したらまた、億ションに引っ越せば良いのです。そういう伸縮が、賃貸なら自在にできるんですね。
もう一つの理由は、借入余力が無くなるからです。「いやいや、むしろ家は資産でしょ」と思った人は、「金持ち父さん・貧乏父さん」を読んで下さい。あれは、自己啓発的な臭いが強い事から馬鹿にする人もいるでしょうけれども、実は不動産に関する基礎知識が身に付く良書です。
家は、単なる負債です。借入だけが増えて、キャッシュを生まないからです。もちろん、投資用のマンションやアパートは資産ですよ。私は賃貸に住んで、投資用のアパートを持っています。これが、不動産に関しては、起業するための最強の布陣です。
投資用アパートでも、追加の借入に悪影響を与えることはありますが、それでもキャッシュを生み続けますし、もし私が死んだ場合には団体信用保険で負債が完済され、家族にアパートが残りますから生命保険に追加で入る必要がなくなります。不動産投資自体にリスクはあるのですが、事業リスクと相殺し、トータルのリスクは減ります。
ちょっと話が逸れました。起業をするなら、借入は視野に入れておくべきです。実際には借りなくても良いのですが、いざというときにお金が借りられるということは大きなアドバンテージなのです。そのことで、失敗するリスクは大きく減少するでしょう。
低金利は買うべき理由にはならない
サラリーマンで将来の起業を考えていて、「この低金利で、お金を借りないと損だ」と思ったとしたら、不動産投資を検討して下さい。思い出して欲しいのは、冒頭に述べた裁定原理、つまり低金利も税制面の優遇も、不動産の価格には既に反映されているということです。
不動産を買ったら得、というタイミングが本当にあるとしたら、それは今のような低金利の時ではなく、リーマンショックのようなパニックが起きていて、金融機関がお金を貸してくれない時です。その時には、不動産は不当に安く買う事ができるかもしれません。
厳しい事を言えば、そういう逆転の発想ができない人には、起業をすることはちょっと、きついかもしれませんね。「人の行く、裏に道あり花の山」。投資もビジネスも、そうなんだと思います。
世間の人がみんな家を買っているならば、その時は不動産のバブルです。絶対に家を買うべきタイミングではありません。その事を知っておくだけでも、成功の可能性は高まるのではないでしょうか。それでは、また。