人生計画であなたの夢を目標に変えて実現する、シナジーブレインの安田修です。
「名人に定跡なし」というのは将棋の世界の格言です。名人と呼ばれる人は時々、周囲が「あれっ?」と思うようなセオリーに反した手を指すことがあります。名人にはセオリーは関係無いということは、セオリーにとらわれている限りは名人になれないのでしょうか。このことについて考えることは、ビジネスでも有益でしょう。
定跡とはセオリーのこと
まず定跡(じょうせき)とは何かということですが、これは「過去から研究が積み重ねられてきた、実績のある指し方」と定義して良いでしょう。詳しくはありませんが、囲碁だと「定石」というようですね。将棋の場合、どんな戦法であっても、序盤から中盤にはほぼ完全に定跡があります。
先人の経験からできていますから、それに従って指している限りは失敗がないわけです。逆に言うと、そこから外れると何らか自分が不利になる可能性があるということです。初心者の頃は「定跡なんて堅苦しい。もっと自由に指したい」などと思うものですが、定跡を知らない人は、知っている人に勝つことはできません。
将棋の名人とはどんな人か
将棋のプロの世界は、厳しい世界です。奨励会という養成機関を勝ち上がって、四段になったらプロ棋士として認められます。プロ棋士になるには年齢制限があり、標準的には小学生から、遅くとも中学生から奨励会に入って血みどろのバトルロイヤルを繰り広げ、勝ち残った人だけがプロになれるというシステムです。
ちなみに、私は将棋はアマ初段なのですが、アマチュアの初段とプロの初段は全く違うものです。アマチュアの名人がプロの四段に勝てるかというと、まれに番狂わせは起こりますが普通は無理です。プロの四段は化け物みたいに強いんです。その中で、更に勝ち続けることができる人が、その時代の名人になります。
「名人戦」というタイトル戦があり、順位戦といういわばバトルロイヤルの続きのリーグ戦の優勝者が名人という称号を得ます。名人というのはその年のもしくは過去の名人位についた人を指すこともあれば、単に伝説的に強い棋士を指すこともあります。まあ要するに一番強い人が名人です。今だと羽生さんですかね。
強くなるには、定跡を知りつくす
奨励会や順位戦に象徴されるプロ棋士の戦いというのは、定跡を研究しつくすことから始まります。今は過去の棋譜をパソコンで確認・分析できますから、プロ棋士は皆、ありとあらゆる対局を集めて研究しています。ある対局のことを知っているか、知らないかで勝負が決まることもあります。そんなレベルです。
ですから昔はともかく現代では、名人と呼ばれる人ももちろん定跡の研究は徹底的にやっています。勉強をしつくして、実際に指された手の背景にあるものを考えつくして、その上でどこかで少しだけ定跡から離れた手を指す。そこで勝負が決まります。セオリーを知らないとそもそも勝負にならないんですね。
名人芸とは守破離の離
日本の伝統芸能の世界では、守破離という考え方があります。まずは先人のやり方やセオリーを徹底的に身につけて、それに対してどこかで自分のオリジナリティーを出していき、最後は「離れる」。 セオリーを意識しなくても身体が勝手に動く無の境地、それが名人だということです。
これは将棋でも同じです。定跡を研究しつくして、少しだけ変化を加えて勝利を収め、最後は定跡を意識せずに指すことができるレベルに達する。これが名人の境地です。定跡を軽んじる人はそもそもアマチュアレベルです。奨励会の段階で、勝ち上がることができないんですね。
セオリーを研究しつくして、それを超える
ビジネスでも同じです。「堅苦しいセオリーなんて無視して、自由にやりたい」という欲求は常にありますが、それはアマチュアの発想です。世の中にはマーケティングやライティング、集客の方法やブログの書き方など成功するために必要な方法があふれています。まずはこれを徹底的に学び、徹底的にパクることです。
セオリーというのは、先人の経験が積み重ねられた成功する確率の高い方法なのですから、まずはそれを身につけることです。「そんな地味なことではなく、自分らしいやり方を作り上げる」という意気込みは良いのですが、まずは「地味なこと」をきちんとできるようになることです。
例えばブログを書いて、見込み顧客の連絡先を集めて、セミナーをやって個別相談をする。それぞれに参考になるノウハウはあります。最初は誰かのマネで良いんです。それをしないと、いつまでもプロのレベルに達することはできません。その上で、いずれは破ったり離れたりすることができるようになるんです。
全てを「自分らしく」自己流でやって、奨励会で消えていく起業家が多いのを見るにつけ、名人に定跡はないけれどもまずは定跡が大切ですよ、と思うわけです。目標を定めて、正しく努力をしましょうね。あなたの場合はどうでしょうか。それでは、また。