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【経営者インタビュー】一般社団法人ハラル・ジャパン協会佐久間様

夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。

今回は経営者インタビュー第3弾、一般社団法人ハラル・ジャパン協会佐久間代表理事にお話をお伺いしました。ハラルとは何か、佐久間さんがどういう想いでこれに取り組まれているか、とても勉強になる内容ですので、お楽しみ下さい!

ハラル・ジャパン協会とは何か

シナジーブレイン安田(以下Y):まずは、御協会の活動内容について簡潔に教えて下さい。

一般社団法人ハラル・ジャパン協会佐久間代表理事(以下S):ハラル・ジャパン協会は非営利の一般社団法人で、基本的に会員を募り、会費で活動が支えられています。『イスラム教国と日本を結ぶ架け橋に』というのが設立目的で、2012年の10月に設立ました。

良くハラル認証団体と間違われますが、我々は認証団体ではなく、
1.教育・研修・情報提供:そもそもハラルとは何か、認証サポート
2.調査:輸出やインバウンドのサービスを検討している企業であれば、そのためにはハラル認証がいるのか要らないのか、イスラム教徒の嗜好に合うのか
3.テストマーケティング:台湾や香港の会社にマーケティング負けしないように、PRや販売促進をお手伝い、バイヤーのマッチング

ということをやっている、日本企業に対するマーケティング支援の団体です。 現在、会員は135社、メールマガジンに登録頂いているのは7,500社・12,000人。食品関係だけでなく、ファンド・証券会社・銀行などあらゆる業種の方に興味を示して頂いています。

ハラルと言うとすぐに「イスラム教徒向けの対応」と連想する方が多いと思いますが、我々はハラルという言葉をキーワード、ASEANや中東にもう少し目を向けていきませんか、インバウンドを意識して事業展開をしませんかというご提案をしています。言わば、「ハラル」は「ひらけごま」のような、合い言葉として使っています。ハラルはあくまで一つの切り口であり、イスラム教徒向けのビジネスだけをする、というわけではありません。

Y:なるほど。私も本日に備えてイスラムの歴史から勉強し直したくらいでお恥ずかしいのですが、読者の方も皆様がそれほどイスラムに詳しいわけではないと思います。簡単に言うと、ハラルとはどういう考え方なのでしょうか。

S:そうですね。まだ100人のうち、5名の方がハラルについてご存知かどうか、という段階です。簡単に言うと、神様が禁じているので、イスラム教徒はお酒を飲んだり、豚肉を食べたりできません。牛肉であっても、イスラム教徒が正しい手続きで処理した肉しか使ってはいけないとか、豚肉とは調理場を分けなければいけないとか。その他にも様々なルールがあります。金融という意味では、金利を取ってもいけません。

そのルールに合っているものが、「ハラル(ハラールとも)」であり、そのルールに抵触しているものが「ハラム」です。イスラム教徒が取り扱うことができるものが、「ハラル適格」ということです。ハラル適格であることの認証を出す団体も、各国にあります。

Y:一般社団法人にされている目的は何でしょうか。

S:この事業はプラットフォーム事業であり、本来は国や行政が対応すべき内容だと考えています。それを民間でやるにはどうしたら良いのかというところで、非営利の一般社団法人という形が良いだろうということになりました。法人の器としては公益財団法人・公益社団法人になっても良いと思っています。

そうかと言って事業として全く考えていないというわけではなく、プラットフォームはハラル・ジャパン協会で、それに付随する周辺事業は別の事業会社が担当し、そちらで収益は取れば良いと考えています。

Y:メンバーは皆さん、常勤なのですか。

S:常勤は2名だけで、他のメンバーはそれぞれが自分の事業を持っている社長です。協会から給料を貰っている人は誰もいません。委託を受けて、周辺事業を実行したりします。周辺事業でIPOするようなものが出てきたら、面白いですよね。

ハラル・ビジネスの将来性

Y:佐久間代表理事はどういうご経歴なのですか。

S:岐阜県の飛騨出身です。高校・大学・就職とずっと岐阜で、大学は工学部の工業化学を出て、汚水処理の勉強をしていたのですが、縁あって中広という広告会社に入社しました。当時従業員は30人くらいしかいなかったのですが、自由にやらせて頂き、業績も非常に良くて、私が常務取締役の時に上場まですることができました。

そこでは地域の活性化を広告という形でやっていたわけですが、あるときふと、「地産地消」であるとか、地域でお金を回しているだけで岐阜は、日本は大丈夫だろうかと疑問に思いました。日本を良くするためには、外貨を獲得しないといけないと。輸出するか、観光客に来て頂くしかない、ということに思い至りました。

そこで、まずは岐阜のものをアジアに向けて売っていこうと思い、44歳で会社を辞めて、何も考えずに東京に出てきました。そして東京で「株式会社東京事務所(現代表取締役)」という商社を作り、地域のものを海外で売ろうとしているときにハラルと出会い、これだと確信しました。

地方と海外を「ハラル」のキーワードで結びつけることが、やりたいことです。地域経済を良くしていきたい、中小企業を良くしていきたいというのが譲れない理念です。ですから、地方銀行や市町村、商社、大学との協業は譲れないところです。海外の方は、イスラム国家57カ国の全てにアプローチしていきたいと考えています。今は海外3支局ですが、将来的には57支局作りたいですね。

Y:ハラル・ビジネスの将来性はどのようにお考えですか。

S: そもそもハラルと出会って何が日本の企業に良いと思ったかというと、
1.イスラム圏は日本とは逆に、今後人口が増えて所得が増えていく。ハラルは今後も拡大していく。
2.イスラム圏の方々は日本人のことが凄く好きで、尊敬してくれている。
3.イスラム教徒は暑い国が多く甘いものが好きなので、肥満・成人病・糖尿病により短命になって
いることが大問題。長生きで健康で美しい、と日本を尊敬の対象としている。

それで取り組んだら良いと考えました。更には、日本では、「宗教」というフィルターがあるので誰も取り組まないので参入障壁があります。「イスラム教はテロで怖い」という短絡的な偏見がありますが、イスラム教も一度勉強して理解してしまえば、仏教とかキリスト教と一緒です。まず、イスラム圏の人口はいずれ世界の3分の1になるので、ここを勉強しないのか、ということですよね。

Y:ある意味、ブルーオーシャンの領域ですよね。競合はありますか。

S:当初はブルーオーシャンどころか、マーケットそのものが無いのかと思いましたが、最近は皆さんがニーズに気付いてくれるようになりました。いくつか似たようなことをやっているところはありますが、先行者利益はトップバッターでやっている当協会にあります。

イベントやセミナーに出て名刺交換したり、ホームページを見た方が、何か相談しようかな、という時に当協会が相談の一次窓口になります。

Y:直近、地銀とも提携をされていますよね。

S:地銀さんもお悩みを抱えていて、地域の企業が利益を上げられずに廃業していくと。ハラルに興味を広げることで、チャンスが産まれて蘇生する企業もあるのではないかという発想ですね。銀行員向けの勉強会をしたり、ご紹介頂いた企業に対してアドバイスをしたりしています。提携先は、年内に15くらいになります。やはり地銀さんは他の地銀さんの動向を気にされているので、1つ提携すると一気に広がります。

Y:そうすると、地方公共団体・大学なども同じことが言えそうですから、凄い勢いで広がりますね。

S:国内は一気に広がります。海外はこつこつ、という感じですね。この仕事は、みんなの為になりますし、海外や日本中に行けるので、ありがたいと思っています。良い仕事をやらせてもらっています。これは天職ですね

将来ビジョンについて

Y:佐久間さんのスケジュール、活動内容を教えて下さい。

S:年間120回くらいセミナーをやっています。今週は名古屋、埼玉。来週は埼玉、岡山、金澤、東京、仙台ですね。海外視察もやっており、今年だけでも、バングラデシュ、シンガポール、ドバイ、カタール、インドネシア、マレーシア、台湾。1ヶ月に1回くらい、2泊3日とかで行きますね。

Y:超過密、かつ弾丸ツアーですね!現地ではどのようなことをされるのですか。

S:輸出のパートナーとなる工場が無いか、どういうチェーン店が進出しているか、どういうものであれば買ってもらえるか等を調査します。日本に来て貰うにはどうしたら良いか、ライバルの韓国や中国はどのようなプロモーションをしているのかなどもポイントですね。

Y:面白そうですね。協会運営上の苦労はありますか。

S:協会という名称からは、天下り、人が多いというイメージを受けるかもしれませんが、実際には内情はベンチャー企業と同じです。ヒト・モノ・カネの全てで苦労はしています。協会で事業はやらないので、お金は出て行かないのが救いですね。

海外視察も、企業のスポンサーが得られるケース、協会の活動費から賄えるケースもありますが、自費で行くケースもあります

Y:将来ビジョンはどのようなものですか。

S:イスラム教徒の方々が食べたいものを、国内で業態開発して広げていきたいですね。それは、事業としてやってみたいと思います。2020年の東京オリンピックに向けて海外の人が圧倒的に来るので、日本の良い所を見て、お土産を持って帰ってもらいたいと思います。食べ物だけではなくて、化粧品や健康食品といった、日本が得意な高付加価値商品を、海外に広げていきたいですね。

Y:副理事長に「ストックビジネスの神様」大竹社長がいらっしゃいますが、ストックビジネスとしての展開もあり得るのでしょうか。

S:支部を作り、知識・ノウハウを教材化して、地方に展開したりすることは考えられます。「ハラル・ビジネス講座」のような形で、ハラルについて教えられる人を育てる「家元ビジネス」のようなことも考えられるかもしれません。そのために、銀行や自治体、大学と提携して協会の信用度を高めるなど、様々な布石を打っています

Y:会員の企業には、ビックネームが多いですよね。

S:名だたる大企業に会員になって頂いています。それだけの企業であっても、ハラルに関する知識を持っていない状態なのです。コンサルティングできるポテンシャルはあるのですが、人材不足で手が回らない状態です。安田さん、どうですか。イスラム金融などのコンサルタントとして、一緒にやりませんか。

Y:ええっ!?将来性は大いに感じますし、面白そうですけど、片手間でやるには辛いですよね。あ、トルコには行ってみたいです(笑)。

S:まあ、考えておいて下さい。

Y:いやいや・・・。最後に一言、PRをお願いします。

S:はい。我々は、地方と海外を「ハラル」のキーワードで結びつけることをやっています。「ハラル×マーケティングで新たな可能性を」ということで、ハラルをビジネスに活かすサポートを行ってまいりますので、何かお困りの点があれば、ご相談下さい。

Y:本日はお忙しい中、貴重なお話を頂きありがとうございました!

【略歴】

・非営利一般社団法人 ハラル・ジャパン協会 代表理事 佐久間 朋宏
・経歴:1964年 岐阜県下呂市に生まれる
1991年 国立岐阜大学工学部工業化学科卒業
1992年 株式会社中広入社
1998年 同社 常務取締役営業本部長就任
2007年 同社 常務取締役管理本部長にて名古屋証券取引所
(証券コード:2139)上場
2009年 株式会社東京事務所・日本エリアマーケティング支援機構設立
現在延べ40社以上の東京事務所、日本事務所を実施、現在に至る
2012年 海外展開(輸出・進出)支援・インバウンド事業(ハラルビジネス)開始
非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会設立 代表理事に就任

・紹介:地域経済活性化のスペシャリスト、マーケティングが専門で国内外に精通し、特に販路拡大とPRが得意で、ハラル(イスラム)ビジネスでは年間100本以上のセミナー・講演・企業研修を実施する。当協会はハラル認証団体ではなく、教育、調査、PRなどマーケティング支援団体の立ち位置で、イスラムビジネスのプラットフォーム事業で地域の中小企業をサポート。