夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。
私が夢の専門家を名乗ると、漏れなく「あ、この人は怪しい人だな」と思われるのですが、それは多くの夢の専門家が取っているこのスタンス「強く信じれば、あなたの夢は必ず叶います」にあるのではないでしょうか。
夢をビジネスにする人々の世界
私は、「夢は必ず叶う」というスタンスを取っていません。ましてや、「強く信じれば、あなたの夢は実現する」なんてことは口が裂けても言いません。いくらなんでもそんなこと、あるわけないじゃないですか。
私は調査を兼ねて、「夢」を取り扱う団体のセミナーなどに参加する機会が多いのですが、どこかに法律があるのかと思うくらい、「夢」と言えば「必ず叶う」ものとして取り扱われています。もし叶わなかったとしたら、あなたが信じきれなかったからだ、あなたが諦めたから叶わなかったんですよとまあ、こうですよ。
理屈はわかります。諦めたら、そこでゲームセットですよね。しかし、諦めなかったとしてもタイムアップが来ればゲームセットになるんです。そういう団体の主張では、そのことをすっかり忘れているのか、何かの都合で敢えてそこを見ないようにしているのかどちらかです。
それでも、私以外の参加者は「夢が必ず叶う」というドグマを信じ込んでいるようで、とても気持ち良さそうにしているので、いつも「気持ち悪っ!」と思って会場を後にします。少し考えればわかるように、そんなわけないですよね。夢は諦めたら叶わないかもしれないけど、諦めなくても叶わないことはありますよ。
自己啓発本の功罪
『思考は現実化する』『引き寄せの法則』といった一連の自己啓発本も、このことを助長しているように思います。読むと確かに世界が変わったような気がして心地よくなるのですが、一夜明けるとまた小さな庶民。取り巻く環境は何一つ、変わっていないことに気付きます。
自己啓発に関して良く言われるのは、「書いてあることは正しいが、行動をしないから変わらないのだ」ということです。それはそうです。トイレ掃除でも人に対して何か価値を提供することでも、やらないよりはやった方が良いことは間違いなく、本を読んで少しでも行動できるのであれば、それは素晴らしいことです。
ただ、十分な行動ができれば「夢が必ず叶う」のかというとそれは違いますよ、ということが、今回の私の主張です。行動を何もしないと夢は叶いません。行動の量が増えれば増えるほど夢の実現は近づきますが、それでもなお、夢が叶わないことがあるのが人生というものです。
夢の実現は確率論の世界
それはそうでしょう。夢が全て叶うのであれば、世の全員が億万長者になることができます。しかし現実には、貧富の問題は相対的なものであり、ゼロサムとは言いませんがWin-Winでもありません。一人の成功者を支える、何万人もの人が存在するのは事実です。その成功する一人になるためには、運の要素もあります。
夢を諦めずに、努力を続けた人の中から、才覚や運に恵まれた一握りの人が成功して、夢を叶えることができる。これが現実です。そのことから、決して目を背けてはなりません。「夢が必ず叶う」と考えることは、自分の頭で考えることをストップしている状態です。結果として、むしろ夢の実現からは遠ざかってしまいます。
だったら夢なんか見ない方がいいのか
今回は随分、厳しいことを言っているようですが、それでは夢なんか見ずに生きていた方が人は幸せなのか。答えはノーです。そういうことを言っているわけではありません。夢を見ることすら諦めたら、それはより低いレベルでの思考停止です。それが幸せと自らに言い聞かせることは可能ですが、望ましくありません。
申し上げたいのは、例え叶わなかったとしても、夢に挑戦する人生は素晴らしいということです。あくまで自分で考えて、自分の責任で、自分のやりたいことをやりたいように、取り組んでいくのが良き人生なのではないでしょうか。最後に「やらなかった後悔」が無い状態。これが理想なのではないかと私は考えます。
石橋を叩きながら、夢にチャレンジする
私の名刺の裏面には、「石橋を叩いて渡るチャレンジャー」と書いてあります。夢が叶うことを信じているからどうやっても良いという考え方、夢は叶わないかもしれないのだから一か八かの大勝負を打つという考え方、いずれも間違いです。夢を叶えるためには、実現の確率が一番高いやり方を必死に探すべきです。
博打を打てば、50%の確率で負けます。ならば負けて取り返しのつかない大勝負はせず、何度負けても再戦できるように資金や環境を整えてから、そっと勝負に挑む。夢の実現はこの繰り返しであり、持久戦だと認識しています。しつこいですが、一つ一つの勝負には、信じているから必ず勝つということは決してありません。
これが夢の専門家としての、夢に対する考え方です。怪しげな宗教や自己啓発団体や、カリスマといったところからは明確に距離を取ります。種をまいて水をやり、太陽の光と風を送り、時間をかけて夢の芽を大きく育てる、私はそういう夢の専門家でありたいと考えています。それでは、また。