夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。
あまり「ギャンブル、ギャンブル」言うのもどうかと思うのですが、ギャンブルというのは確率論の発祥の地であり、資産運用の原点であり、お金の本質を理解するための重要なヒントを多く含んでいると思っています。そんな中、今回は「カジノの女王」、ルーレットのお話です。
ルーレットの期待値は高い?
過去の記事で宝くじの期待値について書いたところ、読者の方から多くの反響がありました。その中で「ルーレットは期待値が高いと思うけど、どうなの?」という質問があったので、お答えします。ルーレットは、期待値はそこまで悪くないですが、プレイヤーにとって最悪のギャンブルです。また夢を壊してしまう・・・。
まず、期待値の話をしましょう。ルーレットにはヨーロッパ型とアメリカ型があって、黒と赤の36個の数字以外にはゼロしかないのがヨーロッパ型、ゼロとゼロゼロの2つがあるのがアメリカ型です。我々がルーレットと聞いて思い浮かべるのはアメリカ型なので、今回はこっちを中心に説明します。
ルーレットの掛け方は「黒か赤か」や「奇数か偶数か」、3列あるうちのどの列か、数字1点・2点・4点など様々な掛け方はあるのですが、基本的には確率が2分の1であれば配当が2倍、3分の1であれば3倍、36分の1であれば36倍、という仕組みになっています。ここまではフェアなギャンブルですね。
ところが、それはゼロとゼロゼロがない(1〜36までの数字だけの)世界の話ですから、ここにゼロとゼロゼロが加わると話は変わってきます。どこに賭けてもゼロとゼロゼロの2つの分だけ、自動的に親が勝つんです。じゃゼロに賭けたらどうなるかというと、その目は38分の1の確率なのに、配当が36倍なんです。
納得いくまで色々と試して頂ければ結構ですが、どんな掛け方をしても、常に38分の2だけは親の取り分であることがわかるでしょう。すなわち、プレイヤーの取り分は94.73%、5.26%は親が「場代」として持っていきます。期待値0.95なら悪くないですか?いえいえ、ルーレットが恐ろしいのはここからです。
人類最大の発明、それは・・・
宝くじと違ってルーレットが怖いのは、それが「繰り返しゲーム」であるところです。宝くじは1度購入すると、次回発売までしばらく間が空きますが、ルーレットは2分に1回くらい、プレイが可能です。1時間も遊ぶと、30回ベットできてしまう。30回、期待値0.947…のギャンブルをすると、何が起こるか。
(0.947)^10=0.582
(0.947)^20=0.339
(0.947)^30=0.197
お分かりでしょうか。30回で、その期待値は0.2以下になるんです。100万円持って意気揚々と挑んだとしても、全財産を賭け続ければ1時間後にそれが場代だけで20万円まで減っていて、そこから運の善し悪しで勝負が決まる。私はそれほど自信家ではないのでとても勝てる気がしないのですが、いかがでしょうか。
アインシュタインが言ったとされる「人類最大の発明、それは複利である」という言葉がありますが、まさに複利の恐ろしさがここで垣間見えるでしょう。お金が複利で増えるときには爆発的に増えますが、複利で減る時もまた、爆発的に減るんです。お〜、こわ。
全財産を賭けずに、少しずつ賭ければ良いのでは、と思った人もいると思いますが、ゲーム全体で起こっているのは常に親が5%ずつ「場代」を取っているということなので、まあ派手に負けるかゆっくり負けるかはコントロールできるかもしれませんが、勝つ確率を考えた場合、同じことです。
勝てるギャンブルは
「カジノの王様」バカラやブラックジャックといったゲームは期待値98〜99%と高く、やり方によってはプレイヤーが勝てるなどとまことしやかに言われたりもしますが、1%でも控除されていれば、繰り返しゲームの複利効果で長期的にはどうしてもプレイヤーが負けます。しかも想像を超えて、大きく負けます。
残念ながら、プレイヤーが勝てるギャンブルというのはこの世に存在しません。なぜ言い切れるかというと、そんなものが本当にあったらカジノが潰れてしまうからです。なぜあれだけ豪華絢爛なカジノが、格安の宿泊料金を提供しつつ、経営を維持できるのか。誰がお金を出しているのか、考えたらわかりますよね。
夢とギャンブルの関係
ということで、夢の専門家が夢を壊すようなことを言いますが、確実に勝てるギャンブルや、確実に儲かる資産運用の方法はありません。あるとすれば、イカサマだけです。私の考え方は、それをベースに行動を積み上げて、夢に近づこうと努力する方が、夢の実現には近づくことができるというものです。
存在するはずのない「誰でも簡単にできる必勝法」なんてものに惑わされたり、並外れた幸運に頼ってはいけません。自分の頭で考えて、長期的なビジョンを描きつつ、確実に努力を積み重ねていきましょう。それこそが、夢を叶える唯一の方法なのですから。それでは、また。