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個人の資産運用に「分散投資」は必要か

夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。

「全ての卵を一つのカゴに入れてはいけない」これがポートフォリオ、すなわち分散投資の基本的な考え方です。落としたら全部、割れちゃうからですね。機関投資家は最新の理論を取り入れ、高度にリスクが分散されたポートフォリオを形成し、運用しています。しかし、個人の資産運用においても分散投資なんて、必要なのでしょうか。

投資目標の設定が大切

例えば、あなたが手元の資金を1年間で倍に増やしたければ、分散投資は不要です。と言うよりも、分散した瞬間にその目標が叶わないことが確定するでしょう。極端な話、1日で2倍に増やそうと思ったら株では約定の関係で間に合いませんから、すぐに競馬場か競艇場に行くしかありません。

手元のお金を、年間何%で運用すれば良いかによって、取るべき運用方法は決まります。20%なら、不動産や債券を組み入れることは不可能ですし、株式の銘柄もあまり分散できないでしょう。2%なら、相当分散しても実現可能です。そして、何%で回すべきかは、あなたが「いつ、いくら必要か」で決まります。

そのためには、まず夢から始まります。例えば「5年後に起業をする」という目標を立てたら、それにはいくら必要なのかをシミュレーションします。資本金で500万円、1年間の生活費で500万円、と考えたと。それで、手元にいくらあり、毎月いくら貯金できるかがわかれば、逆算で年間の目標利回りが決まります

モダン・ポートフォリオ理論

モダン・ポートフォリオ理論はハリー・マーコウィッツというアメリカの経済学者が確立した理論で、まあ今では古典になってしまいましたが、基本的な考え方であることは変わりありません。統計学的な知識は少しだけ求められますが、そんなに複雑なことは言っていないので、少し勉強してみても良いかもしれません。

人はリスク回避的であるとか、投資家は合理的であるとか、経済学にはつきものの例の非現実的(笑)な仮定はありますが、そのあたりは大胆に捨象して結論を述べると、投資家は完全には相関のない複数の資産を持つことによってポートフォリオのリスクを減らすことが出来る。つまり、分散投資することによりリスクを減らすことが出来るということを数学的には証明しています。

余談ですが、私は昔から資産運用やポートフォリオに興味があり、経済学部であったにも関わらず理系の先生が担当している数学のゼミに入りました。そして「モダンポートフォリオ理論における内点法を活用したアルゴリズムの最適化」という、さっぱり意味のわからない卒論を書き、恐らく人事の人もその意味がわからなかったのでしょう、就職した日本生命ではめでたくシステム部門に配属されたという甘酸っぱい過去を持ちます。

アクティブファンドとおさるのダーツ

で、その理論を突き詰めていくと、例えば日本株に投資をするときには「結局、一番効率的なのは全銘柄に分散するおとなんじゃないの?」という結論に辿り着きます。「敗者のゲーム」という本(名著です)にもこのことは書かれていて、平均的なアクティブファンドのマネージャーはインデックスに勝てないらしいです。

ちょっと単語が難しいですか。簡単に言うと、年収2千万円くらい貰って株式投資をしているプロのマネージャーが命を磨り減らして選んだポートフォリオの運用成績が、おさるがダーツで適当に選んだポートフォリオに負けることが半分くらいあるということです(笑)。下手すると、手数料の分だけ負ける、と。

だったら個人投資家は始めから、例えば日経平均などのインデックスに連動した、コストの低いパッシブ(受動的な、アクティブの反対で、機械的な運用方法)ファンドに粛々と投資をするのが、市場に「負けない」投資方法なのかもしれないよ、とこの本では言っていますし、私も究極のところ、そう思います。

ハイパーインフレへの備え

株の話ばかりになりましたが、他の記事でも再三言ってきたように、「自分だけは世間が気付いていない成長銘柄や、絶妙のタイミングを発掘できる」というのは個人投資家の勘違いであると考えると、株に投資をするならインデックス連動のETFで十分、という結論に達します。面白くはないですけどね。

そして、株式相場は変動が激しいですから、できれば大暴落に備えて債券にも分散しておきたいところです。更には、1000兆円を超える負債を抱えていつか破綻する国家財政を思えば、ハイパーインフレに強い不動産などの実物資産、外貨の株や海外の不動産にも分散しておくと安心です。前述の分散効果も高くなります。

どのカゴが壊れるのかわからないので、できるだけ複数のカゴに分けておきたいところです。利回りが国内株式と同じくらい高い資産でも、相関が100%でなければ分散することでリスクが減ることは、マーコウィッツ先生も言っていることですし、個別銘柄もアセットクラスも、運用上の制約条件が許すなら、できるだけ分散した方が良いのです。リスクとリスクをぶつけると、全体のリスクは減るんです。

結局は自己責任なのだけど

今はETFの商品が揃っているので、世界分散や通過分散、アセット分散は個人でも比較的簡単に実現できます。なので、資産の多寡を問わず、個別株の動向に一喜一憂するよりも分散投資のポートフォリオ形成に全力を注いだ方が、得られるものは多いと思うんですよ。

まあ、資産運用に関しては皆さんそれぞれの拘りがあるので、何を言っても議論は平行線を辿ることが多いです。理論的にはそんなに間違っていることを言っているつもりはありませんが、どんなに分散しても壊滅的な損失を被ることもありますし、単一銘柄の株式投資で大成功するスタイルの投資家も存在します。

結局は、最後は自己責任でお願いしますということになるのですが、少なくとも自分で責任を取らないといけないのなら、まずは勉強しなくてはいけないと私は思うのですが、いかがでしょうか。それでは、また。

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